第390章:千佐子の蜜月(12)

「夢遊病じゃないよね?どうやってここに入ったの?」

「抱きかかえて連れてきたんだ」

「服は?」青木岑は少し呆然として尋ねた。

「僕が脱がせたんだ……」

「つまり……今の状況は、あなたが私の入浴を覗いているってこと?」青木岑はもう崩壊寸前だった。

西尾聡雄は浴室の中の椅子に座って、タブレットで株価の動きを見ながら、妻の入浴を眺めていた。

「覗いているんじゃない、一緒にお風呂に入っているんだよ」西尾聡雄は訂正した。

「まったく、こんなに厚かましくて極端な人いないわ。よくもまあ堂々と私の入浴を覗くわね」青木岑は怒りで笑ってしまった。

「私たちは夫婦だから、覗きという概念はない。すべて合法的だ」西尾聡雄はタブレットを置き、正々堂々と言った。

「わかったわ、じゃあ西尾様、今ちょっと出ていってくれない?これから体を洗うから」

「だめだ」

「どうして?」

「なぜなら……僕が洗ってあげるから」言い終わると、西尾聡雄は数歩で近づき、大きな手を浴槽の中に伸ばした。

「あっ……」青木岑は驚いて叫び声を上げた。

二人はふざけ合いながら体を洗い、水しぶきが床一面に散った……

西尾聡雄が青木岑を浴槽から抱き上げた時には、すでに深夜の12時半を回っていた。

青木岑はバスタオルに包まれて床に横たわり、薄暗い灯りの下で、完璧な女体は極限まで魅惑的だった。

西尾聡雄は彼女を見つめる瞳が深く暗くなっていった……

「岑……」彼の声は少しかすれていたが、致命的な魅力を帯びていた。

青木岑は西尾聡雄を見つめ、その眼差しは優しく深い情愛に満ちていた……

彼女はこれから何が起こるのかを知っていた……

「いいかな?」西尾様は青木岑の機嫌を損ねないよう、自ら許可を求めた。

青木岑は恥ずかしそうに頷いた……

葱のように白い指先が彼の唇を撫で、そのまま下へと移動し、首筋まで辿り着いた……

西尾聡雄は喉を鳴らし、喉仏が大きく動いた。彼は思った。自分は意志の強い人間で、どんなものにも深い興味を持たない。ただ青木岑だけは、この人生で断ち切れない毒であり、彼の心も骨も蝕んでいく存在だった。

ベージュ色の丸い天蓋の中で、二つの影が絡み合い、呼吸さえも激しくなっていった。

西尾聡雄はもう7年前の粗暴で衝動的な少年ではなく、青木岑も初めての経験をする乙女ではなかった。