「夢遊病じゃないよね?どうやってここに入ったの?」
「抱きかかえて連れてきたんだ」
「服は?」青木岑は少し呆然として尋ねた。
「僕が脱がせたんだ……」
「つまり……今の状況は、あなたが私の入浴を覗いているってこと?」青木岑はもう崩壊寸前だった。
西尾聡雄は浴室の中の椅子に座って、タブレットで株価の動きを見ながら、妻の入浴を眺めていた。
「覗いているんじゃない、一緒にお風呂に入っているんだよ」西尾聡雄は訂正した。
「まったく、こんなに厚かましくて極端な人いないわ。よくもまあ堂々と私の入浴を覗くわね」青木岑は怒りで笑ってしまった。
「私たちは夫婦だから、覗きという概念はない。すべて合法的だ」西尾聡雄はタブレットを置き、正々堂々と言った。
「わかったわ、じゃあ西尾様、今ちょっと出ていってくれない?これから体を洗うから」
「だめだ」
「どうして?」
「なぜなら……僕が洗ってあげるから」言い終わると、西尾聡雄は数歩で近づき、大きな手を浴槽の中に伸ばした。
「あっ……」青木岑は驚いて叫び声を上げた。
二人はふざけ合いながら体を洗い、水しぶきが床一面に散った……
西尾聡雄が青木岑を浴槽から抱き上げた時には、すでに深夜の12時半を回っていた。
青木岑はバスタオルに包まれて床に横たわり、薄暗い灯りの下で、完璧な女体は極限まで魅惑的だった。
西尾聡雄は彼女を見つめる瞳が深く暗くなっていった……
「岑……」彼の声は少しかすれていたが、致命的な魅力を帯びていた。
青木岑は西尾聡雄を見つめ、その眼差しは優しく深い情愛に満ちていた……
彼女はこれから何が起こるのかを知っていた……
「いいかな?」西尾様は青木岑の機嫌を損ねないよう、自ら許可を求めた。
青木岑は恥ずかしそうに頷いた……
葱のように白い指先が彼の唇を撫で、そのまま下へと移動し、首筋まで辿り着いた……
西尾聡雄は喉を鳴らし、喉仏が大きく動いた。彼は思った。自分は意志の強い人間で、どんなものにも深い興味を持たない。ただ青木岑だけは、この人生で断ち切れない毒であり、彼の心も骨も蝕んでいく存在だった。
ベージュ色の丸い天蓋の中で、二つの影が絡み合い、呼吸さえも激しくなっていった。
西尾聡雄はもう7年前の粗暴で衝動的な少年ではなく、青木岑も初めての経験をする乙女ではなかった。