第400章:1夕の急変(10)

「どうしたの?気に入らない?」

「好きか嫌いかは誰からもらったかによるわ。桑原勝、桑原家の皇太子様なんだから、こんなファンを失うようなことはやめてよ。どうしてそんなに私にこだわるのか分からないけど...とにかく、今のあなたは私の仕事と生活の邪魔になってる。もうやめてください」

「青木岑、僕が花を贈るのは...贈るのが好きだからだ」桑原勝は最後まで「好きだ」という言葉を口にすることができなかった。

自分が青木岑のことを好きになってしまったことは分かっていたが、そんな率直な告白は少し恥ずかしかった。

「あなたが贈るのが好きだからって、私が受け取らなきゃいけないの?おかしいでしょ?言っとくけど、このままだとあなたのランボーに傷つけるわよ」

「どうぞご自由に」桑原勝はさらに楽しそうに笑った。

「変態」青木岑は怒って電話を切った。

西尾聡雄の方で障害がなくなってから、桑原勝の部下は青木岑の多くの情報を調べ上げた。若い頃のものまで。

そこで初めて分かったのは、青木岑が感情知能も知能も非常に高く、若くして名を馳せた人物だったということだ。

ただ、西尾聡雄の派手な恋愛が引き起こした家庭の悲劇により、最後には輝かしい未来を諦めることになった。

なるほど、青木岑の医術が非常に優れているのは、彼女が医学の天才だったからだ。それなのに現実によって看護師にまで追い込まれてしまった。

彼はまた、青木岑が学生時代に最も好きだった食堂が信太郎ラーメンだということも知った。

青木岑には熊谷玲子という親友がいて、長年唯一の親友だった。

青木岑には貧困地域で小さなスーパーを営む母親がいた。

青木岑には市内のある大學に通う弟がいて、彼女が非常に可愛がっている家族だった。

青木岑の好きな服装はナチュラルで、化粧は好まず、髪型はポニーテールやお団子、もしくは下ろしていた。

青木岑には眼科医だった元カレがいたが、すでに別れて結婚していた。

青木岑は高校時代、クラスの花形的存在だった。容姿ではなく、大らかな性格によってだ。

彼は気づいた。知れば知るほど、深みにはまっていく。青木岑のすべてが、こんなにも興味深かった。

昨日、信太郎ラーメンで長時間ラーメンを食べていたのは、味を楽しむためではなかった。

あの頃、自分が関われなかった青木岑の青春を感じるためだった。