「あの……うちの院長は好みがちょっと重いんですよ、はは」青木岑は気まずそうに笑った。
西尾聡雄はそれ以上追及しなかった。彼は青木岑の桑原勝に対する態度を知っていたので、心配する必要はなかった。
「今日は何時に終わる?」
「まだわからないわ。三日休んでたから、仕事が山積みになってて」青木岑は山のような資料を見て頭が痛くなりそうだった。
「早く終われば、一緒に食事でも」
「うん」青木岑は頷いた。
「生姜湯を飲むのを忘れないでね」西尾聡雄は真剣に注意を促した。
「わかってるわよ、玄奘三蔵様……」青木岑は呆れた。普段は寡黙な西尾聡雄が、なぜか彼女に対してだけ玄奘三蔵のようにおしゃべりになるのが不思議だった。
ビデオ通話を切ると、二人はそれぞれの仕事に戻った。
午後、青木岑は経理部から連絡を受けた。工事部が裏庭の修繕のために青木基金から資金を使用したいとのことだった。