第431章:私のことを西尾奥さんと呼んでください(1)

「聞こえなかったなら仕方ないわ。いいことは二度は言わないから」青木岑は意図的に西尾聡雄の脇の下に顔を埋めた。

「もう一度言って、お願いだから、もう一度」

西尾聡雄は胸の中で抑えきれない興奮を感じながら、抱擁から青木岑を引き出し、彼女の清楚な顔を両手で包んだ。

まるで哀願するように……

「私ね……子供が欲しいの。私自身のルーツは曖昧だけど、将来の子供にはそうなって欲しくないの。子供には、お父さんが誰で、お母さんが誰なのかをはっきりと知ってもらいたい。私たち二人の愛情を全部注ぎたいの」

「岑……これは君と知り合って何年も経つけど、一番心に響いた言葉だよ」西尾聡雄は感動で胸がいっぱいになり、青木岑の腰をきつく抱きしめた。

「それで……?」

「だから、これからは本題に入らないとね……」西尾聡雄は意味深な口調で言った。