岩本奈義は桑原勝が反応を示さないのを見て、さらに大胆に手を下へと這わせた……
彼女は自分の情熱で桑原勝の興味を引けると信じていた。
おそらく彼女は自分に自信を持ちすぎていたのだろう。だから桑原勝に押しのけられた時、彼女は呆然としてしまった。
「気分じゃないんだ。泊まりたいなら、一階に客室があるから好きにしてくれ。帰りたいなら自分で車を運転して帰ってくれ」そう言うと、桑原勝は二階の寝室へと向かった。
岩本奈義は面目を失ったように感じた。初めてこんなに積極的に身を投げ出したのに、拒絶されてしまった。
ほぼ確実なのは、桑原勝が彼女に興味を失ったということだ。他に好きな人ができたのだろうか?
最初は桑原勝が綿菓子に目をつけたのかと思っていたが、最近彼女は綿菓子を見張らせていた。
あの女は演技をするか家に帰るかのどちらかで、基本的に桑原勝とは全く接点がなく、会社で時々顔を合わせる程度だった。
桑原勝も無関心な様子で、まるで綿菓子が誰なのかも忘れてしまったかのようだった。
会社の新人でもないし、セレブ界の人か、それとも業界外の人なのだろうか?
岩本奈義は混乱していた……
彼女は泊まるつもりだったのか?もちろんそんなことはない。客室に泊まって何になる、全く意味がない。
彼女が立ち上がって帰ろうとした時、突然桑原勝の手の中のスマートフォンの画面が光るのを見た。WeChatの通知が来たようだ。関口遥からのメッセージだと通知で分かった。
スマートフォンの画面が光った瞬間、彼女は重要な情報を発見した……
桑原勝のスマートフォンの壁紙が、ある女の写真だったのだ……
これは今までにない状況だった。彼女は桑原勝を何年も知っているが、彼のスマートフォンの壁紙はいつも風景で、時々は愛車の写真に変わることはあっても、女の写真を壁紙にすることは一度もなかった。
しかし今はある。ほんの一瞬の光りだったが、岩本奈義はそれを見分けることができた。
あの女は南区療養院の看護師さんではないか?
地味な外見の、全く目立たない、一目見ただけですぐに忘れてしまいそうな人。
彼女は……本当に桑原勝の心を掴んだのか、単なる遊びではないのか?