第465章:命がけの大逃走(5)

「趙という姓の女で、お金持ちだ。それ以上は言えない……」

従者は歯を食いしばり、大きな決意を固めたようだった。

「ああ……彼女か」青木岑は悟ったように言った。

「解毒剤は?」従者は手を差し出した。

すると青木岑は小さなガラス瓶を取り出し、兄貴に少量の水を飲ませた。

「解毒剤はもう飲ませた。サウナで汗を流して、温かいお風呂に入れば、すぐに回復するはずだ」

「なぜあなたを信じられるんだ?」従者は怒りを露わにした。

「他に選択肢がないからさ……信じるも信じないもあなた次第だ。幸運を祈るよ」そう言うと、青木岑は勢いよく兄貴を車から押し出し、従者はすぐに車を降りて支えに行った。

青木岑は運転席に座り、走り去った……

青木岑は帰宅後、まず熱いシャワーを浴びた。実は先ほどまで、彼女も動揺していた。

しかしあの状況では、絶対に慌ててはいけなかった。相手に隙を見せたら終わりだったから。

あの薬は麻酔剤に過ぎず、毒薬ではなかった。色が変わったのは、着色料を加えたからだ。

後であの人に飲ませたのも解毒剤ではなく、ただのミネラルウォーターだった。しかしそうする必要があった。兄貴が本当に毒を飲まされたと信じ込ませるためだ。

シャワーを浴びた後、青木岑は紙とペンを取り出して似顔絵を描き始めた。

20分後、兄貴の似顔絵が完成し、携帯を手に取ると、バッテリーが切れて自動的に電源が切れていたことに気付いた。

充電器を差し込み、電源を入れると、すぐに佐藤然から電話がかかってきた……

「青木さん、大丈夫か?」

「大丈夫よ」

「今どこにいる?」

「家にいるわ」

「座標通りに捜索したが、何の手がかりもなかった。一体何があったんだ?誰があなたを害そうとしたんだ?」青木岑が無事だと聞いて、佐藤然はようやく安心した。それまでずっと心配していたのだ。

「佐藤さん、私は犯人の似顔絵を描いたわ。後でLINEで送るから。この男がリーダーで、従者という部下がいたの。時間の関係で彼の絵は描かなかったけど。彼らは2台の車で私を襲撃したわ。1台は黒のホンダの商用車で、ナンバーはCX1470。もう1台は白のバンで、ナンバーはER5464よ。調べてみて。できれば直接逮捕して。彼らは誘拐専門の集団で、前科があるはずよ」

「分かった、すぐに調べる」