その後、佐藤然は事の経緯を熊谷玲子に詳しく話した。
彼女は心臓がドキドキして怖くなった……でも最後に青木岑が無事で良かった。
「うわぁ、次は結論だけ先に言ってよ!死ぬかと思った。」熊谷玲子はほっと息をつき、コップの水を一気に飲んだ。
「青木岑ってすごく賢いよね。一人で九人と戦って、しかも力の弱い女の子なのに。」
「だから天才なんでしょ。自分で毒薬まで作れるなんて、すごすぎ……」
「あれは毒薬じゃないよ。鑑定してもらったけど、超強力な麻酔薬に青木岑が着色料を混ぜたものだった。ハハ、彼女はもう化け物みたいだね。西尾聡雄が彼女を好きなのも分かるよ。」
「え?あなたも彼女に惚れちゃった?」熊谷玲子は冗談めかして聞いた。
「冗談でしょ。あんな女、僕みたいなバカには相応しくないよ。西尾聡雄と戦わせておけばいい。」
「そうね。あなたみたいなバカが刑事課長になれたなんて、どれだけの運を使ったんだか。」
「おい、なんだその言い方は?」
「私はいつもこうよ、慣れなさい……」熊谷玲子は意味深げに言った。
「明日フライトある?」
「ないわ、休暇よ。」
「あのさ、ウォークラフトが公開されたんだけど、見に行かない?」
佐藤然は学生時代、熊谷玲子と一緒にウォークラフトをプレイしていたことを思い出した。最初は西尾聡雄と青木岑も一緒だったが、あの二人の変態は強すぎて、全スキルを使いこなした後、アカウントを引退して新しいゲームに移った。
結局、二人だけがのんびりとプレイし続けていた……
「見たくないわ。昔プレイしてたのは思い出だけど、映画まで見なきゃいけないってわけじゃないでしょ。数日後に『ファインディング・ドリー』を見に行くつもりよ。あの小魚が大好きなの。」熊谷玲子は気のない様子で言った。
「うちの職場の福利厚生がケチで、お金じゃなくてワンダシネマの映画チケットをくれたんだけど、見ないのはもったいないし……」
「私にくれればいいじゃない。私が両親と従姉妹、甥っ子たちを連れて行けるわ……」
佐藤然:……
「チケットは二枚しかないよ。」佐藤然は怒って意地悪く言った。
「じゃあ私と青木岑で見に行くしかないわね。」熊谷玲子は物憂げに言った。
佐藤然:……
「でも青木岑は西尾聡雄と行くんじゃないの?邪魔したいの?」佐藤然は呆れた様子で言った。