「姉さん、仕事終わった?」
「うん、今帰ったところ」
「明日の予定は?」幸治は神秘的に尋ねた。
「まだわからないわ、西尾聡雄がまだ帰ってないから」
「姉さん、西尾兄を家に連れて帰ったらどう?明日、私たちの家に」
「実家?無理よ、お母さんが怒り死んじゃう……」青木岑は躊躇いながら言った。
「でもいつかは会わないといけないでしょう?この機会に関係を改善できるかもしれないよ。明日はちょうど僕も授業がないし、休みを取ったから帰るつもりだし、その時は僕が助けるから、お母さんはそんなに恥をかかせたりしないよ。……このことで怒ってるけど、この前毛糸を買ってるのを見たんだ。秋用のセーターを編んでるみたいで、きっと誕生日プレゼントだと思う。帰らなかったら、がっかりすると思うよ」
幸治の言葉に、青木岑は少し心が揺らいだ……
西尾聡雄を連れて帰りたい気持ちはあるけど、お母さんのことが……?
「わかった、考えてみる」
「うん、連絡待ってるよ。姉さん、そうそう、帰ってきたほうがいいよ。僕もプレゼント用意してるからね」幸治はにこにこしながら言った。
「わかったわよ、ずるい奴」
幸治との電話を切ると、熊谷玲子からLINEが来て、これも明日の予定を聞いてきた。
前に佐藤然が、四人で小さな集まりをしようと言っていたけど、西尾聡雄が帰ってこないので、具体的な予定は決められなかった。
そう考えていると、西尾聡雄がドアを開けて入ってきた……
「お帰り」青木岑はスリッパを履いたまま小走りで近づき、西尾聡雄にスリッパを取りに行った。
「まだ食事してないだろう?行こう、着替えて、海鮮を食べに」西尾聡雄は愛情たっぷりに青木岑を抱きしめた。
「海鮮?いいね、大好き」言うや否や、青木岑はすぐにソファーからコートを取った。
二人は車で有名な海鮮料理店へ向かった……
「佐藤然と玲子たちも誘う?」
「いや、せっかくの二人の時間だから」西尾聡雄は否定した。
「そう、でも今日は祝儀袋もらっちゃったのよ」青木岑は舌を出して笑った。
西尾聡雄はメニューを手に取り、手慣れた様子で青木岑の好きな海鮮料理を全て注文した。
「あなた……打ち明けたいことがあるの」
「花火のこと?知ってるよ」
「違うの……それ以外にも」
「桑原勝のことだろう」西尾聡雄はすでに察していたようだった。