第32章:前世で借りた分(2)

「今はまだ何とも言えないわ。不審な点が多すぎるから」

「私たち、このまま村を離れるの?永田伯父の古い家を見に行かないの?」あの背筋が凍るような古い家のことを思い出し、青木岑は怖さを感じながらも、見に行きたいと思った。もしかしたら何か手がかりがあるかもしれないから。

西尾聡雄は首を振って言った。「危険すぎる。もし永田伯父が他殺だとしたら、今この瞬間も、犯人の目がその古い家を見張っているはずだ。私たち外部の者が村を訪れただけでも注目を集めているのに、さらに家に入り込もうとすれば、疑いを招くことになる。それに、彼が口封じのために殺したのなら、証拠なんて残すはずがない」

「納得できないの……」実際、西尾聡雄の言う理屈は青木岑にもわかっていた。でも、彼女の言う通り、納得できなかった。やっと実の両親に近づけたと思ったのに、また手がかりが途切れてしまった。この気持ちは本当に辛かった。

西尾聡雄は片手でハンドルを握りながら、もう片方の手を青木岑の手の甲に置いて、優しく叩いた。「わかっているよ、岑。落ち着いて。全ての謎はいつか必ず解けるさ。私がこの世にいる限り、君の実の両親を探すことを全力で手伝う。早く家族が再会できるように」

「もしかして……両親は私に会いたくないのかもしれない」青木岑は珍しく落ち込んで、ネガティブな感情を抱き始めた。

「そんなことはないよ。こんなに可愛い娘がいるなんて、喜んで仕方がないはずだ」西尾聡雄は慰めた。

「あなた……私、本当に両親に会えるのかしら?」青木岑は自信なさげに言った。

「もちろんさ。君が望むなら、必ず叶うよ」

青木岑は黙り込み、車は田舎道を静かに走り続けた……

二人は東陶町を離れるつもりだったが、町から数百メートル離れたガソリンスタンドで給油している時のことだった。

青木岑が突然言い出した。「あなた、車をここに預けて、タクシーで戻りましょう」

「どうしたの?」西尾聡雄は不思議そうに彼女を見た。

「もし誰かが私たちを見張っているなら、車が出て行くのを見て、私たちが去ったと思うはず。途中でタクシーに乗り換えて戻れば、誰にも気付かれないと思うの」

「でも戻って何をするの?意味がないよ、手がかりは途切れてしまったんだから……」

「他にやりたいことがあるの」青木岑は神秘的な笑みを浮かべた。