第31章:前世の借り(その1)

「鼠殺しの薬を飲んだんです。言っておきますが、永田さんも考えが浅かったですね。子供がいないのは確かに寂しいことですが、政府がいるじゃないですか?私は彼を生活保護の対象者として申請しましたし、これからは毎月国からの手当てもあるはずでした。生きている人間が困り果てることはないはずなのに、彼は考えが及ばなかったんです。私たちみんな悲しんでいます」村長の目には悲しみが浮かんでいた。

「どうして突然農薬を飲んだんですか?検死は行われましたか?本当に自殺で、誰かに殺されたわけではないんですか?」青木岑は疑わしく思い、核心を突いて尋ねた。

村長はそれを聞いて少し驚いた様子で、「殺人?そんなことはありえません。間違いなく自殺です」

「どうしてそんなに確信が持てるんですか?」西尾聡雄が尋ねた。

「だって、彼が自分で町の農薬店に行って鼠殺しを買ったんですよ。女将さんも確認していますし、家にネズミが多いからって言って買ったそうです。まさか自分で飲むとは思わなかったんですよ。はぁ...」村長は深いため息をついた。

西尾聡雄と青木岑は、何かを悟ったかのように視線を交わした...

「彼が亡くなった後、姪っ子は戻ってきましたか?」西尾聡雄は永田伯父に唯一の親族がいることを思い出した。

「連絡はしましたが、来られないでしょう」

「なぜですか?」青木岑が追及した。

「実は、永田伯父は南の方で何年も過ごしていて、私たちはそこで老後を過ごしているものと思っていました。しかし、姪っ子が離婚騒ぎを起こしたそうです。夫が浮気をして、すでに離婚が成立したとか。姪っ子は一人で二人の女の子を育てていくことができず、再婚するしかなかったようです。ところが、再婚相手には一つだけ条件があって、子供は育てても年寄りは絶対に面倒を見ないと。しかも、姪っ子を厳しく管理して、お金も持たせないそうです。ルフィもないのに、どうやって帰ってこられますか?永田さんの遺体は今、保健所の冷蔵庫に安置されていて、明朝には火葬場に運びます。火葬の費用は村民で集めました。本当に可哀想です」

これを聞いて、西尾聡雄と青木岑は事情を理解した。なるほど、永田伯父が突然南の方から戻ってきた理由が分かった。