しばらく愛し合った後、西尾聡雄はようやく青木岑を離してあげた……
青木岑は先ほどの二人の様子があまりにも大胆すぎたと感じていた。もし誰かが入ってきて見たら、お祖母さんの家まで恥をかくことになるのではないか。こういうことは家に帰ってからすべきではないのか?
恥ずかしさで赤くなった青木岑の顔を見て、西尾聡雄は口角を少し上げた……
「お前、仕事頑張れよ。俺は先に行くから」
「もう行くの……?」青木岑は少し名残惜しそうだった。
「お前は仕事中だし、ずっとここで邪魔するわけにもいかないからな」そう言って、西尾聡雄は微笑みながら立ち上がった。
青木岑は黙って彼の後ろについて行き、小さな手が彼の大きな手の中に握られていた。
盗撮された写真について、西尾聡雄は青木岑に話さなかったし、彼女に尋ねもしなかった。なぜなら、彼は自分の妻を百パーセント信頼していたからだ。
写真を撮った人たちは不純な動機があり、ただ二人の関係を壊したいだけだった。
彼はいくつかの可能性を考えた。まず第一に、母親が自作自演で人を雇って撮影させたこと。
第二に、青木重徳というあの変態が動き出して、人を雇って撮影し、母親に送って西尾家の内紛を引き起こそうとしていること。
もう一つは桑原勝だ。彼の青木岑への思いは西尾聡雄にはよく分かっていた。しかし今まで何の行動も起こしていない。これは桑原家の皇太子らしくない振る舞いだ。だから桑原勝の可能性も極めて高い。
二人が病院の入り口に着いたとき、ちょうど桑原勝も出てきた……
彼は青木岑を見たとき、目が輝いていたが、西尾聡雄を見たとたん、その輝きは消えた。
「こんな偶然があるものですね、荒木社長」西尾聡雄は桑原勝と挨拶することを決して避けなかった。青木岑の件では絶対に桑原勝に負けないと確信していた。自分と青木岑との10年近い愛情を信じていたからだ。
「ええ、本当に偶然ですね」桑原勝も冷笑いしながら挨拶を返した。
ギャンブラー号での別れ以来、これが二人の初めての私的な出会いだったが、まさか病院でとは思わなかった。
西尾聡雄は軽く微笑んで振り返り、「お前、ここまででいいから、早く仕事に戻れよ」
「うん」青木岑は素直に頷いた。
西尾聡雄は青木岑にキスをして、桑原勝の前で見せつけることもできたはずだ。