第58章：一体誰が盗撮？（8）

青木岑は頷いて微笑みながら挨拶した……

「どこに行くの？」矢野川は軽い調子で尋ねた。

「職員食堂で夕食を食べに行くところです。」

「へぇ、なんて偶然だ。私たちもまだ食べてないんだ。一緒に行かない？」矢野川は積極的に声をかけた。

桑原勝はずっと黙ったまま、ただ青木岑を見つめていた……

「あの……うちの食堂の料理は……すごく不味いんですよ。」青木岑は親切に警告した。

「大丈夫だよ、僕と桑原様は何でも食べられるから。食べ物なら何でもいいんだ。そうだよね？桑原様？」

そう言って、矢野川はわざと桑原勝の方を見ながら尋ねた……

そして小声で付け加えた。「明日の朝には退院するんだ。これからは南区に堂々と来る機会なんてないよ。チャンスだと思って大切にしなよ。」

ところが、桑原勝は矢野川の言葉を聞いた後、こう言った。「君たちの職員食堂の料理は確かに不味い。豚の餌みたいだ。」

矢野川：……

青木岑：……

「兄貴、そんな風に水を差すのはどうなの？僕にできるのはここまでだよ。」矢野川は、桑原勝が正気を失ったんじゃないかと思った。せっかくの治療の機会なのに、感謝するどころか、食堂の料理を豚の餌呼ばわりするなんて。こんな物言いじゃ、友達なんていなくなるぞ。

でも桑原勝のような人物は、青木岑にしか手に負えないだろう。

青木岑は彼を見つめながら、一字一句はっきりと言った。「そんなこと言うなんて、まるで豚の餌を食べたことがあるみたいですね。でなければ……豚の餌が不味いなんてどうして分かるんですか？」

矢野川：……

桑原勝：……

「ハハハハ……青木岑、お前すごいな。俺は壁以外には誰にも頭を下げないけど、お前だけは別だ。」矢野川は大笑いした後、親指を立てた。

桑原勝は顔を曇らせた……

「先に食事に行きますね。さようなら。」

青木岑は、この二人の金持ち息子と時間を無駄にする必要はないと思った。職員食堂は不味いかもしれないが、食べないと食券が無駄になってしまう。国の食糧を無駄にするのは良くない習慣だ。

そう思って食堂の方へ向かって歩き出した……

ところが、数歩進んだところで後ろから足音が聞こえ、振り返ると、二人がついてきていた。

「えっと……さっきまで豚の餌みたいだって言ってたじゃないですか？」彼女は面白そうに桑原勝を見ながら尋ねた。