西尾聡雄が彼女をどこに連れて行きたいのか、青木岑はもう尋ねなくなっていた。尋ねても無駄だからだ。
これまでの経験から、もし尋ねたとしても、西尾様は「当ててごらん?」という二文字で返すだけだった。
あれこれ推測して、そんな頭を使うことを、青木岑はもうしたくなかった……
毎日南区であんなに疲れているのだから、帰宅してまで頭を使いたくなかったのだ。
そこで彼女は、西尾様が用意してくれたすべてを静かに待つことにした……
結局のところ、彼女にとっては、西尾聡雄と一緒にいられれば、どこでもよかった。
大衆食堂で食事をするのも、海辺で夜景を見るのも、市街地で映画を見るのも、郊外の夜市を散策するのも、ただ二人で街を歩くだけでもよかった。
20分後
市街地にある7階建ての眠らない街の入り口で、西尾聡雄は目立つマイバッハを停めた。