青木岑は少し躊躇したが、電話に出た……
「もしもし?」
「岑、T市の件は知ってるよね?」
「うん、知ってる」
「西尾聡雄はそっちに行ったんだろう?」
「何を聞きたいの?」青木岑は少し不機嫌になった。
「別に詮索するつもりじゃないんだ。ただ、あっちで何か起これば、明後日の新会社のオープニングは台無しになるだろうってことを言いたかっただけだ」
「そんなことはないわ。生配信を見たけど、日程は変更しないって言ってたもの」
「それは桑原勝がまだ手を打ってないからだよ。桑原勝が本気を出したら、あなたの西尾聡雄は大変なことになるぞ」
「桑原勝が本気を出す?」青木岑は疑問に思った。
「西尾聡雄が映像会社を立ち上げた理由は分かるでしょう?」青木重徳は軽く笑った。
青木岑は黙り込んだ。確かに知っていた……