「そうだね、今日は病気の話はしないで、お酒を飲むだけにしよう」
「なぜ?」坂口晴人は警戒して青木岑を見つめた。
「酒は百薬の長だからね……はは、安心して、私はあなたが酔っ払った時にプライバシーを撮影したりしないわ。そんな職業倫理に反することはしないから」
「分かってます」坂口晴人は静かに答えた。
「じゃあ、飲む?飲まない?あなたの意思を尊重するわ。私を信用してくれるなら、座って思う存分飲んで。不安があるなら、それも理解できる。結局、あなたは公人だし、もし英子姉が知ったら、私は叱られるでしょうね、きっと」青木岑は無邪気に笑いながら、叱責や苦情を覚悟の上で、あえて型破りな方法を試してみようとした。
約5秒の沈黙の後……
坂口晴人はゆっくりと顔を上げ、澄んだ瞳を見せた。
「じゃあ……飲みましょう」
確かに、この頃彼はあまりにも抑圧された生活を送っていた。英子姉は彼に対して厳しく、全くお酒を飲ませてくれなかった。
アイドルのイメージを損なうような失態を心配してのことで、英子姉が彼のためを思ってのことだと分かっていた。
だから争うこともなく、今青木岑がこのお酒を出してきて、思う存分飲ませてくれることに。
彼は本当に若い人で、心が騒いでいた……
純粋なホルモンが躍動していた……
こうして、二人は向かい合って飲み始めた。
青木岑は北国の娘で、性格は豪快で、特に酒好きな酔っ払いだった。
西尾聡雄に見つかったら終わりだろうが、坂口晴人の治療の行き詰まりを打開するため、彼女は本当に命がけだった。
まさに命を賭して君子に付き合うというところ……
「このお酒、美味しいですね。どこで買ったんですか?」坂口晴人はみかん味のワインを手に取って尋ねた。
「あー……うちのです」青木岑は少し気まずそうに、西尾様の家から盗んできたとは言えなかった。
「あなたの家のお酒は本当に良いですね。英子姉は私にお酒を飲ませてくれなくて、カクテルさえめったに飲めない。商演の時に、経営者たちと少し飲む程度で、私は本当に応酬が嫌になった。でも現状を変えることができない。私って、すごく捻くれてますよね?」
坂口晴人は苦笑いを浮かべた……
「生活を変えられないなら、まず自分を変えてみたら?」青木岑は落ち着いて言った。
「自分を変える?」坂口晴人は疑問そうに彼女を見た。