第120章:皆が失態を待っている(10)

桑原勝は一歩一歩、西尾聡雄と青木岑に向かって歩いてきた……

皆は息を殺して、この皇太子が一体どんな芝居を演じるのか、見守っているようだった。

これまでの経験から見ると、桑原勝の短気な性格からして、良いことは期待できず、場を荒らしに来たのかもしれない。

西尾聡雄と青木岑の二人は、桑原勝を見ても驚かなかった……

今日のような場面では、競争相手が来ても当然のことだった。

「西尾社長……おめでとうございます」桑原勝は率先して手を差し出した。

「ありがとうございます、荒木社長」

西尾聡雄が手を差し出し、二人は軽く握手を交わした……

事情を知らない人には何も分からないが、知る人ぞ知る、これは水面下での波乱の予兆だった。

「今回は君の勝ちだ……」桑原勝は静かに言った。

「運が良かっただけです」西尾聡雄は少しも得意げな様子を見せず、相変わらず冷たかった。

「しかし、これは始まりに過ぎない……これからもっと面白くなるぞ」桑原勝のこの言葉は、明らかに宣戦布告だった。

今回の勝負は戦いの序幕に過ぎず、終わりではないことを示していた……

「楽しみにしています」西尾聡雄はいつもの高慢な性格で、二言だけ返した。

周りのメディアや記者たちは、二人が握手して祝福を交わしているのを見ただけで、内情は知らず、写真を撮りまくっていた。

最後に、桑原勝は青木岑を一瞥して、そっと言った。「君のその格好……なかなか独特だな」

そして桑原勝は思わず笑いを漏らし、背を向けて立ち去った……

青木岑は彼を白い目で見た……人を皮肉るのに、そんなに遠回しにする必要があるのか?

開会式が終わると、VIPたちは宴会場で昼食会に集まった。

数百人の会場は大いに賑わっていた……

青木岑は着替えとメイクを落としに下りて行った……

西尾聡雄はVIP休憩室に入り、永田さんはすぐにBOSSに水を注いだ。

「BOSS、よかったです、戻ってきてくださって。私がどれだけ心配したか分かりますか?どうやっても連絡が取れなくて、携帯電話もホテルの内線も通じなくて、本当に変でした」

「誰かが細工をして、通信が遮断されていたんだ」西尾聡雄は一口水を飲んで、淡々と言った。