桑原勝は一歩一歩、西尾聡雄と青木岑に向かって歩いてきた……
皆は息を殺して、この皇太子が一体どんな芝居を演じるのか、見守っているようだった。
これまでの経験から見ると、桑原勝の短気な性格からして、良いことは期待できず、場を荒らしに来たのかもしれない。
西尾聡雄と青木岑の二人は、桑原勝を見ても驚かなかった……
今日のような場面では、競争相手が来ても当然のことだった。
「西尾社長……おめでとうございます」桑原勝は率先して手を差し出した。
「ありがとうございます、荒木社長」
西尾聡雄が手を差し出し、二人は軽く握手を交わした……
事情を知らない人には何も分からないが、知る人ぞ知る、これは水面下での波乱の予兆だった。
「今回は君の勝ちだ……」桑原勝は静かに言った。
「運が良かっただけです」西尾聡雄は少しも得意げな様子を見せず、相変わらず冷たかった。