「私は秋雪と子供に会いに来たの」青木岑は冷たい目で寺田徹を見つめた。
以前は寺田徹に何の感情もなかったが、今、吉田秋雪と子供があまりにも哀れな姿を見て。
彼女は既にこの男を嫌い始めていた。もう大學時代のあの清純な少年の面影はなかった。
あるのは気持ち悪い人でなしだけ……
「秋雪に会いに来たの?仲がいいみたいだね?」寺田徹は吉田秋雪と青木岑が和解したことを知らないようだった。
「それは私と彼女の間のことよ。あなたに話す必要はないわ」
そう言って、青木岑は自分の車に向かって歩き出した……
「岑……」
「何か用?」青木岑は足を止めたが、振り向きもしなかった。彼に会いたくなかった、少しも。
「君は…今どう過ごしているの?」
「ふふ……テレビや新聞で見ているでしょう?」青木岑は軽く笑った。
「西尾聡雄は君にとって良くないと思う。彼はこんな風に無責任に公表して、君を世間の注目の的にした。彼が君と愛を見せびらかすのは、彼らの事故の件を白に染めようとしているんだ……君は利用されているんだよ、分かっているの?」
青木岑はこれらの言葉を聞いて、寺田徹を振り返り、複雑な表情で言った。「そう?私は本当に利用されているの?」
「そうだよ、君はそんなに賢いのに気づかないの?」寺田徹は懇々と諭すように言った。
「忠告ありがとう。今やっと私が利用されていることが分かったわ。でも……それがどうしたの?彼は私の夫よ、私は利用されても構わない……」青木岑は意図的に言った。
「君はお金のためなら何でもするつもりなの?あんな意地悪なお姑さんに虐められても我慢するつもり?」
「これだけ年月が経っても、あなたは私のことを少しも分かっていないわね……言っておくけど、私は一番強い酒を飲んだこともあるし、最愛の人を諦めたこともある。キチガイのように我儘になれるし、男のように仕事もできる。家では良妻賢母になって、夫を支え子供を育てることもできる。全ては相手が誰かによるの。だから決してあなたの立場から私を見ようとしないで。きっと永遠に理解できないから」
言い終わると、青木岑は振り返ることなく立ち去った……
寺田徹とは、もう何も話すことはなかった……
知っている他人すら、もはやではなかった……
吉田秋雪母子に対して行ったことだけでも、許す価値はなかった……