「二人で行ってくれ。私は興味ないから」と桑原勝は黙って俯いて言った。
「お前一人で行けよ。俺も興味ないし」と関口遥は笑った。
「じゃあ、後で月下倶楽部で一杯どう?」と矢野川は再び提案した。
「今日は家に帰るから、お前たちで楽しんでくれ」
桑原勝が家に帰ると聞いて、運転手はすぐに彼を桑原家の別荘まで送った。
桑原勝は独立してから桑原家にはめったに帰らなくなった。おそらく独立に慣れたせいで、軍隊にいたあの頃は、基本的に二年に一度しか帰らなかった。
桑原奥さんは息子に会いたくて仕方がなく、こっそりと部隊まで会いに行っていた。
しかし今日は何故か急に帰りたくなった……
傷ついた子供は、みな家族の慰めを必要とするのかもしれない……
桑原勝が帰宅したのは、まだ夜の八時だった……