第185章:頭が良すぎて人を弄ぶ(5)

「どうしたんだよ?」矢野川は口を大きく開けて、関口遥を見つめた。

関口遥は女性を口説くのが得意な方ではなかったが……今まで失敗したことはなかったのに。

やっと気になる子に出会えたのに、その子の婚約式に出席することになるなんて?

「別に……何でもないよ」関口遥は苦笑いを浮かべた。

「あのさ……ベッドインした?」矢野川が尋ねた。

「してない」

「マジかよ……見直したわ」矢野川は、あの子は煮え切った鴨が飛んでいったようなものだと思った。

あの日、月下倶楽部で、あんなに……激しく遊んでたのに……

最後には婚約することになって……しかも許せないのは関口遥とベッドインもしてないことだ。

「縁がなかったんだろうな……」関口遥は正直、中島美玖のことが少し気になっていた。

でも……相手にその気がないんだから……

それに相手は婚約するし、両家とも名家同士なんだから、自分は関わらない方がいいだろう?

「そんな弱気な事言うなよ。桑原様を見習えよ……結婚してても諦めないし放棄しないぞ」

「俺に何の関係があるんだよ?」桑原勝は無実の表情を浮かべた。

まさに巻き込まれただけなのに……

「いや、俺が言いたいのは……関口坊ちゃんが……やっと良い子に出会えて、気取らなくて、グリーンティーでもなく、生意気でもない女の子で、春が来るかと思ったのに……春が来る前に、いきなり冬が来ちゃったってことさ」

矢野川は本当に関口遥が不憫でならなかった……

「仕方ないさ……俺の出番が遅かったんだから」関口遥は両手を広げた。

この話題を出されて桑原勝もまた憂鬱になった……

「遅れたからって何だよ?出会って知り合えたのも縁だろ……俺は君とは考えが違う。青木岑のことは……しつこくはしないけど、絶対に諦めない……」桑原勝の決意は固そうだった。

「桑原様を見てみろよ、それと比べてお前は……」

矢野川は軽蔑するような目で関口遥を見た……

関口遥はただ軽く笑うだけだった……

彼は桑原勝のように激しい性格ではないし、そんなに直接的でもない……

中島美玖を逃したのは少し残念だけど……そこまで受け入れられないことでもない。

そもそもあまり接触もなかったし……

だからそんなに辛くもないし、ただ少し残念に思うだけ……

翌朝

西尾聡雄は早めに起きて、青木岑と朝食を共にした。