「申し訳ありませんが、これは私的なことです」桑原勝は笑顔で応えた。
「荒木社長...飯島智さんのことですか?噂によると...先日、飯島智さんの誕生日に、あるハイクラスのレストランで二人で食事をしているところを目撃されたそうですが」
「荒木社長、飯島智さんの新しい赤いフェラーリはあなたからの誕生日プレゼントだと噂されています」
「荒木社長...お祖父様は、桑原家は芸能界の女性を孫の嫁にはしないとおっしゃっていましたが、この件について、お祖父様はご存知なのでしょうか?」
「荒木社長、お答えください。飯島智さんがスターキング投資の全作品で主演を務めているのは、お二人が恋人同士だからなのでしょうか」
これらの記者たちも本当に困ったものだ、飯島智のことまで持ち出すなんて...
桑原勝も否定せず、ただ微笑むだけだった...
そして彼のアシスタントの広瀬さんが、全ての記者たちを追い払った...
「皆様、どいていただけますか?もう行かなければなりません」
荒木社長が公に否定しないということは、暗に認めているということ...
なぜそうするのか、それは簡単なことだ。これらの人々が勝手な憶測で青木岑に迷惑をかけることを恐れているからだ。
つまり、桑原勝は本当に覚悟を決めたのだ...
誰かを静かに守るということは...自分がすべてを引き受け、しかも苦しいとも思わないということなのだ。
「彼が真剣な時は、本当に男らしいよな」関口遥が笑って言った。
「桑原様は恋する男としての道を突き進んでいるな...」矢野川も困ったように首を振った。
「これはこれでいいんじゃない?想いを持つことができるんだから」中島美玖はこう考えていた。誰かをこれほど好きになれることは、たとえ結ばれなくても、それは一つの幸せだと。この手の事は、人それぞれの考え方があるものでしょう?
みんな心の中で考えていることは違うものだ...
式典が終わり、もう午後になっていた...
招待客たちが次々と帰っていき、西尾聡雄は年配の芸術家たちを見送っていた。
青木岑は化粧室に行ってメイクを落とした。
そしてイブニングドレスを脱ぎ、スポンジ・ボブがプリントされた黄色いパーカーに着替えた。
野球帽をかぶり、白いスニーカーと黒のスキニーパンツで出てきた...