第250章:彼女はついに危機感を感じた(10)

「ふん……正直、似てるところなんて全然ないわ」

おそらく青木岑は西尾聡雄のことをよく知りすぎていたため、その雰囲気の違いがすぐに分かったのだろう……

彼女は携帯を取り出して写真を撮り、熊谷玲子に送信した。

「マジかよ……やっぱりブライズメイドになったの?あなたって本当に聖女ぶってるわね」

熊谷玲子は大石紗枝が嫌いで、青木岑がブライズメイドを引き受けることに反対していた……

「お願いだから、それは重要じゃないでしょ?大石紗枝の旦那を見てよ、西尾聡雄に似てる?」

「まさか!二百万円くらいの差があるわよ……あなたの西尾様の雰囲気なんて持ち合わせてないわ。冗談はやめてよ」

「私も似てないと思う。みんなの噂が広がっただけかもね」

「いくらかかったの?」

「そんなに多くないわ、四万円だけよ」

「それでも結構な額じゃない?寺田徹の結婚式の時は千円だったじゃない、あはは」

「あの時は、千円でも多すぎたわね……」青木岑は俯いて笑った。

「それでは、両者で指輪の交換をお願いします」

宣言の後、牧師が言った……

青木岑はすぐに携帯をしまい、立ち上がってトレイを持って進み出た。

トレイには二つのダイヤモンドの指輪が載っていた。かなり大きく見え、相手も権力者の子息だと聞いていた。

大石紗枝は感謝の眼差しで青木岑を見つめ、夫と指輪を交換した。

「では、新郎は花嫁にキスをお願いします」

新郎は衆人環視の中、身を屈めて大石紗枝に軽くキスをした……

会場は雷鳴のような拍手に包まれた……

青木岑が戻ってきた時、関口東が目配せをしているのに気付いた。

彼女は関口東について教会を出て、入口にある休憩室に向かった。

「私に用?」青木岑は彼を見つめた。

「さっきの彼女の失礼な言葉、気にしないでくれ」

「それだけ?……安心して、気にしてないわ」

「実は他にも話したいことがあって……」

「言ってみて」

関口東は言いづらそうな様子だった……

青木岑は彼が話し出すのを待っていた……

「実は最近、うちの商売があまり上手くいってなくて、市内のほとんどの工事を松山武に請け負われちゃってる。あいつは人脈が広くて、うちの仕事をいくつも奪っていって、うちの商売は下り坂一直線で……」