彼女は微笑んで、西尾聡雄の答えを黙って認めた……
「入って座って」西尾聡雄は本当に何年も彼女に会っていなかったので、少し戸惑っていた。
細川詩が8歳の時、西尾家に1年間預けられ、9歳の時に両親と一緒に海外へ行った。
今や彼女と西尾聡雄は27歳になり、18年も会っていなかったことになる。
もし彼女が前もって空港まで迎えに来てほしいと電話をしていなければ、西尾聡雄は彼女だとは全く気付かなかっただろう。
永田さんはすぐにコーヒーを入れて持ってきた。
「ありがとう」細川詩は微笑んだ。
「昨日帰国したばかり?」西尾聡雄は尋ねた。
「うん、突然帰国を決めたの。両親にサプライズを与えようと思ったんだけど、父が海外出張で、母も一緒に行ってしまって。だから飛行機を降りた時、どうしようか分からなくなって。でも……以前西尾母さんがあなたの番号をくれていたから、昨夜は迎えの手配をしてくれてありがとう」
細川詩はとても丁寧だった……
「気にしないで……母が僕の番号をあげたの?」
「うん」
「いつの話?」西尾聡雄は少し不機嫌そうだった。
なぜ母はいつも勝手に決めるのだろう?この点は本当に気に障る……
「2週間くらい前かな。いつ帰ってくるのかずっと聞かれて、会いたがっていたわ」
「そう」
「どうかしたの?」西尾聡雄の様子がおかしいのに気付いて、細川詩は尋ねた。
「何でもない」
「忙しいのは分かっているから、午前中は邪魔しなかったの。お昼休みに合わせて来たけど、一緒にお昼を食べに行かない?」
細川詩の話し方は上手で、西尾聡雄は断りづらくなった……
行かないと言えば、気にしているということになるから……
西尾聡雄はうなずいて、「そうだね、ちょっと待って、仕事の処理をしてから」
彼は机に戻り、重要な書類を片付けて金庫に保管した。
そして細川詩と一緒に階下へ向かった……
途中で、西尾聡雄は青木岑に電話をかけた。
「お前、どこにいる?」
「もう家に帰ったわ、南山の方」
「そんなに早く?一緒に食事に行こうと思ったのに」
「いいの、結婚式で食べたから。大石紗枝の結婚式の料理はとても豪華で、種類も多くて美味しかったわ」
青木岑はハサミを持って芝生の手入れをしながら電話に出た。
「分かった、じゃあ夜に」
「うん」