「私の絵を、どうか嫌わないでください」細川詩は誠実に笑いながら言った。
西尾聡雄は細川市長から聞いていた。細川詩はここ数年イタリアで絵画を学んでいて、かなり夢中になっているようだと。
彼は慎重に絵巻を開いた。確かに衝撃的だった……
他の留学帰りの人たちとは違い、細川詩の絵は外国風でもなく、ゴッホのような模倣でもなかった。
純粋な中国風の水墨画だった……
絵巻には、黒い枯れ枝、落ち葉、わずかに隆起した丘、遠くには大きな山と明月が描かれていた。
川面にはきらめく波、孤帆の遠影、そして近くには、月に向かって杯を掲げる故人の姿があった。
とても風情があった……
「これは……君が描いたの?」西尾聡雄は少し驚いて尋ねた。
「はい、中国風の要素のある絵が大好きで、この数年ずっと夢中で研究してきました。父の言葉を借りれば、私は魔に取り憑かれたようだと」