第287章:桑原様、紅顔に怒りを発す(7)

「もしもし、先輩」

「悦子、着いた?」

「まだです……先輩、私、行けなくなってしまいました」山田悦子の声は少しかすれていた。

「どうしたの?」

「私……体調があまり良くなくて……本当に申し訳ありません」

「ああ、大丈夫よ。具合が悪いなら家で休んでね。今度改めて誘うわ」

電話を切ると、青木岑は眉をしかめた……

今や幸治だけでなく、青木岑も様子がおかしいと感じていた……

これはあの賑やかな女の子らしくない?一体何があったのだろう?

「彼女は何て言ってたの、姉さん?」幸治は焦りながら尋ねた。

「来られないって。具合が悪いんだって」

「やっぱりそうか」幸治は少し落胆した。

三十周年記念式典にも来なかったし、引っ越すと言っても様子を見ると言うばかり。

今日の姉さんの食事会にも山田悦子は来なかった。きっと何か隠していることがあるに違いない。