「もしもし、先輩」
「悦子、着いた?」
「まだです……先輩、私、行けなくなってしまいました」山田悦子の声は少しかすれていた。
「どうしたの?」
「私……体調があまり良くなくて……本当に申し訳ありません」
「ああ、大丈夫よ。具合が悪いなら家で休んでね。今度改めて誘うわ」
電話を切ると、青木岑は眉をしかめた……
今や幸治だけでなく、青木岑も様子がおかしいと感じていた……
これはあの賑やかな女の子らしくない?一体何があったのだろう?
「彼女は何て言ってたの、姉さん?」幸治は焦りながら尋ねた。
「来られないって。具合が悪いんだって」
「やっぱりそうか」幸治は少し落胆した。
三十周年記念式典にも来なかったし、引っ越すと言っても様子を見ると言うばかり。
今日の姉さんの食事会にも山田悦子は来なかった。きっと何か隠していることがあるに違いない。
「あまり考え込まないで。明日また彼女に聞いてみるわ」
「うん」幸治は頷いて、うなだれながらテーブルに戻った。
青木岑と西尾聡雄はメインの席に戻った……
佐藤然、熊谷玲子、中島美玖、関口遥、幸治、永田美世子、そして西尾夫婦。
合計八人で、みな仲の良い間柄だった。もちろん関口遥は中島美玖に連れてこられただけで、本来は桑原勝のグループだった。
「さあさあ、みんなで乾杯しましょう。青木先生の卒業を祝って」
「お母様……本当に秀才な娘さんを育てられましたね」中島美玖は笑いながら言った。
「岑はね、小さい頃から賢かったの……不思議に思うくらい。昔、原伯父に言ったことがあるの。この子は私みたいに鈍くもないし、青木源人のようなずるさもない。賢くて優しい心の持ち主で、本当に私の産んだ子なのかしらって」
永田美世子は感慨深げに語った……
青木岑はそれを聞いて、西尾聡雄と目を合わせた……
この話題は青木岑にとってかなり敏感で気になるものだったが、母親はまだ真相を知らないようだった。
「青木岑は遺伝子突然変異じゃないですか」佐藤然が口を挟んだ。
「うちの子をゴリラか何かと勘違いしてるの?遺伝子突然変異って…想像力豊かすぎない?そうね、宇宙人だって言えばいいじゃない」熊谷玲子は佐藤然と言い争った。