「もしもし、先輩」
「悦子、着いた?」
「まだです……先輩、私、行けなくなってしまいました」山田悦子の声は少しかすれていた。
「どうしたの?」
「私……体調があまり良くなくて……本当に申し訳ありません」
「ああ、大丈夫よ。具合が悪いなら家で休んでね。今度改めて誘うわ」
電話を切ると、青木岑は眉をしかめた……
今や幸治だけでなく、青木岑も様子がおかしいと感じていた……
これはあの賑やかな女の子らしくない?一体何があったのだろう?
「彼女は何て言ってたの、姉さん?」幸治は焦りながら尋ねた。
「来られないって。具合が悪いんだって」
「やっぱりそうか」幸治は少し落胆した。
三十周年記念式典にも来なかったし、引っ越すと言っても様子を見ると言うばかり。
今日の姉さんの食事会にも山田悦子は来なかった。きっと何か隠していることがあるに違いない。