青木岑は道中で西尾聡雄に幸治のことについて大まかに話した。
だから西尾聡雄も状況を把握していた。
青木岑は熱のある体で二階へ上がり、幸治の寝室へ向かった。
「幸治、ドアを開けて、お姉ちゃんよ。」
何度もノックしたが、幸治は応答しなかった……
「幸治……ドアを開けて、話があるなら出てきて話しましょう。」
「姉さん、起きてるよ。ただ一人で静かにしていたいんだ。」
青木岑は困ったように西尾聡雄を見た……
西尾聡雄が前に出て、「私がやってみよう。」
「幸治、義兄さんだ。ドアを開けてくれないか。会社での実習について話したいことがあるんだ。」
果たして、西尾聡雄の声を聞いた原幸治はゆっくりとドアを開けた。
「やれやれ、やっと開けてくれたか。」
青木岑は幸治が無事なのを見て安心した……