第359章:青木家の乱(9)

「どうしたの?彼が行くと聞いて、悲しくなった?」西尾聡雄は優しく彼女を抱きながら尋ねた。

「そんなことないわ。どうせ彼は自分で決めたことだし、私も干渉したくないの。どこに行くの?いつ出発するの?」

「ニュージーランド……ウェリントンのまあまあいい大學よ。専攻も今の彼の専攻と似ているし、ビザも下りた。三日後の飛行機だ」

「そんなに早いの?」青木岑は驚いた。

「今日彼に電話したんだ。彼自身の意思だよ」

「わかったわ」

「じゃあ、後で家に食事に行こう。彼が海外に行く前に一緒に過ごそう」

「うん」青木岑は頷いた。

十分後、西尾聡雄は残りの書類にサインを終え、青木岑と一緒に外に出た……

「あなた……お母さんが持ってきた桂花餅、食べないの?」彼女はデスクの上にある精巧な食べ物の箱を見た。

「君が好きなら、あげるよ」

「いらないわ」青木岑はすぐに断った。

「僕も好きじゃないんだ。彼女は……いつも勝手に決めてくる。僕はこういうものを好きだったことなんてないのに、どうして彼女はこれを思いついたんだろう」

その後、西尾聡雄は食べ物の箱を手に取り、二人は外に出た。

「ボス、お帰りですか?」

「ああ、これをあげるよ、夜食に」

「ありがとうございます、ボス」永田さんは休暇から戻ってきてから、すっかり元気になっていた。

以前よりもやる気が出ているようだった。西尾聡雄も彼を育てたいと思っていた。彼はかなり賢く、仕事も信頼できると感じていた。

会社を出た後、二人は天福マンションの家に向かった。

幸治はすでに退学し、家で荷物をまとめていた。

永田美世子は息子と別れるのが辛かったが、止めはしなかった。彼女も息子が気分転換するのはいいことだと思っていた。

どうせ留学は一年か二年で、そんなに長くはない。

「二人とも帰ってきたのに、なぜ前もって言ってくれなかったの?もう少し料理を作るわ」

「お母さん……忙しくしないで。何でも適当に食べるだけでいいわ。そんなにお腹も空いてないし」

「わかったわ、じゃあスープを一つ作るわ」言い終わると、永田美世子はキッチンに向かった。

そのとき、原幸治が階段を降りてきた。「姉さん、義兄さん」

「荷物の準備はどう?」青木岑は尋ねた。