水野日幸は突然興味を示した。「安美さんはいつから恋愛を始めたの?」
安美は「私は恋愛したことがありません」と答えた。
水野日幸は彼女の急に暗くなった目を見て、それ以上質問を続けず、窓の外を見つめた。
安美には感じるものがあった。彼女の前では、誰の心も一目で見透かされ、隠れ場所などないのだと。
山田林監督は、すでに個室を用意していた。
レストランに着くと、ロビーで待機していた助監督が直接彼女たちを案内した。
山田林の助監督は、二人の美しい若い女性を見て心が震えた。『笑江山』の脚本家がこんなに若いとは想像もしていなかった。脚本を見る限り、経験豊富な才能ある古参が書いたものだと思っていた。
ベビーフェイスの女の子はとても可愛らしく、関連書類を手に持ち、穏やかな雰囲気を醸し出していた。クールな美女の半歩後ろを歩き、彼女に対して非常に敬意を払っていた。
前を歩くクールな雰囲気で、全身から近寄りがたい高慢さを漂わせている女の子が、『笑江山』の脚本家、出雲七に違いない。
助監督はドアをノックし、開けて入った。「安藤監督、お客様がお見えになりました」
水野日幸は個室の中を見渡した。全部で5人いて、向かい側にいるやせ型で背が高く、文人のような雰囲気を持つ中年男性が、新世代の監督、山田林だった。
山田林の目に明らかな驚きが浮かんだ。脚本家の出雲七が若い女性だとは思っていなかった。
水野日幸は山田林の方へ真っ直ぐ進み、軽く頷いて、冷たいながらも礼儀正しい声で言った。「安藤監督、こんにちは。出雲七です」
「こんにちは」山田林は笑顔で招き入れた。「出雲先生、どうぞお座りください」
彼は目の前の若い女性を観察した。若くして人を圧倒する雰囲気を持っており、彼自身もプレッシャーを感じるほどだった。
山田林は今回、水野日幸の他にプロデューサーと投資家を呼んでいた。互いに紹介を済ませてから、この面談を始めた。
「出雲先生、この脚本を拝見しましたが、なかなか良くて面白い発想ですね。若くしてこれほど優れた脚本を書けるなんて、若者は頼もしいものです。ただ、いくつかの箇所で適切でないと感じる部分があり、脚本を修正する必要があります」
「投資の観点から言えば、この脚本には市場性がなく、インパクトが足りません。テンポが遅く、刺激が足りず、感情の起伏も十分ではありません」