水野若社長は丁寧にエビの殻を剥きながら食べていた。その瞳は薄い氷の層に覆われたように、何を考えているのか読み取れなかった。
監督の山田林は横で聞きながら、苦々しい表情を浮かべていた。
この時代、出資者が偉いのだ。スポンサーは敵に回せない。
「出雲先生、私たちが話したことについて、問題なければ来週までに脚本を修正してください。」
「安藤監督、私たちはできるだけ早く撮影を始めたいんです。来月初めでどうでしょう。二ヶ月の撮影期間で十分でしょう!」
「それと、この役者についてですが、適当な人を探せばいいんです。ギャラが高すぎる人はダメです。女性二番手は探さなくていい、こちらで候補を用意していますから。」
出資者たちは、普段から偉そうにしている。金を出すのは彼らだから、何でも彼らの言うことを聞かなければならない。監督も脚本家も大したことない、最終決定を伝えるだけでも優遇してやっているようなものだ。