第99章 心まで甘く

まるで五つ星ホテルに泊まったことがないと思われているようだが、このホテルは朝食券しか提供せず、特別な要望がない限り、夕食は提供しないのだ。

一橋渓吾は生まれて初めて五つ星ホテルに泊まり、手を洗って夕食に行こうとした時、ドアをノックする音が聞こえた。

水野日幸がドア前に立ち、軽く頷いて「入っていい?」と尋ねた。

一橋渓吾は突然目の前に現れた少女を見て、心臓の鼓動が速くなり、少し落ち着かない様子で頷いた。「何か用事?」

「用事がないと会いに来ちゃいけないの?」水野日幸は持ってきた物を適当にテーブルに置き、無造作に部屋を見回すと、案の定ルームサービスのワゴンを見つけた。

ワゴンの上の料理は、彼女の部屋のものと全く同じだった。

「食べた?」一橋渓吾は彼女を見つめ、緊張して何を話せばいいか分からない様子だった。