第100章 私はお酒を飲みません

石田文乃は豚のように深く眠り込んでいて、今この時、空から刃物が降ってきても起こすことはできないだろう。

Redバーは帝京大学の近くで最も有名なバーで、帝京全体でも名の知れた存在だった。

水野日幸はバーに入ると、すっかり別人のようになり、イケメンの少年に変身していた。最も彼女をよく知る人が目の前に立っていても、彼女だと気付くことはできないだろう。

スマートなスーツ姿、凛とした立ち姿、さっぱりとした短髪、端正な顔立ち、気品に満ちた冷たい雰囲気は、バーにいる様々な美女たちの心をときめかせ、思わず声をかけずにはいられなかった。

水野日幸は次々と寄ってくる美女たちの誘いを丁寧に断り、3階のVIP個室へと向かった。

3階の廊下は薄暗かった。

305号室は、特進クラスの人々が寛いで集まる場所だった。