「藤田さん……」川村染は男性が去っていくのを見て、本能的に追いかけようとしたが、向かってくる工藤沙織を見て、悔しそうに足を止めた。
この憎たらしい工藤沙織め、また邪魔をしに来やがって!
曽我若菜は憧れの人の背中を見つめ、目には不満と怒りが満ちていた。心は不安で苦しかった。自分が何か間違ったことをしたのだろうか?なぜ藤田さんはあんな態度をとるのだろう。
彼女の知っている藤田さんは、紳士的な御曹司で、いつもファンのサインの要求を断ることはなかった。
江川先生と話すときも、とても礼儀正しく紳士的だったのに、なぜ彼女と母に対する態度は、そんなに変わってしまったのだろう?
「川村先生」工藤沙織は笑いながら近づいてきた。「あなたも江川先生を探しているんですか?」
曽我若菜は意地の悪そうな工藤沙織を見て、さっき母が藤田さんを追いかけなかった理由が分かった。この付きまとう厄介な女がまた邪魔をしているのだ!