第142章 あなたをおいて他に誰がいる

一度や二度、三度と、毎回彼女に会えると思っていた。

でも、彼女は現れることはなく、この人が本当に存在するのかと疑い始めた。

ファッションショーの後はパーティーだった。

江川歌見は来場したすべてのゲストにお礼を言いに来た。

「中森茜先生はなぜいらっしゃらなかったのですか?」川村染は笑顔で尋ねた。

「彼女はね、忙しいのよ。高校三年生で、来学期は受験だから、抜けられないの。」江川歌見はにこやかに説明した。「みなさんもご理解いただけると思うけど、勉強が大変で、今の子供たちは本当に大変なのよ。」

曽我若菜は胸がドキリとし、目の奥に暗い色が浮かんだ。高校三年生?水野日幸も高校三年生じゃない!

「中森茜先生は本当に優秀な生徒さんですね。」川村染は丁寧に言った後、また尋ねた。「江川先生、中森茜先生についてご相談させていただいた件ですが、彼女の考えはいかがでしょうか?」

この中森茜、プライドが高いかどうかは別として、彼女の才能は確かに感服せざるを得ないものだった。

今回のデビューショーの全てのドレスは、個性が際立ち、素晴らしく美しく、一目で中森茜の手によるものだとわかった。

江川歌見は笑いながら言った。「川村先生、ご安心ください。私たちの日本の芸能界で、あなた以外に誰がいますか。彼女によく考えてもらうように言っておきますから、良い知らせをお待ちください。」

川村染は心が躍り、誇らしげに背筋を伸ばして笑った。「では、江川先生、ありがとうございます。」

江川という老女が、ついに折れたわ。

やっぱりあの中森茜は、わざと値段を上げさせようとしていただけ。結局はお金のため、自分の価値を上げたいだけなのよ。

大したことないくせに。もし最後まで承諾しなかったら、まだ少しは見直したかもしれない。

今になって承諾するなんて、軽蔑するわ。結局は傲慢な犬畜生に過ぎないってことよ。

「川村先生、どういたしまして。みんな仲間ですから。」江川歌見は言い終わると、他の人々と挨拶を交わしに向かおうとした。

「江川先生。」川村染は彼女を呼び止め、曽我若菜を紹介しようと連れて行った。「こちらは私の娘で...」

曽我若菜は江川歌見に挨拶する準備をし、最高の笑顔で好感を得ようとしていた。