第146章 彼女は妹に違いない

水野日幸が貴賓室に足を踏み入れると、藤田清輝が突然立ち上がり、彼女の方へ歩み寄ってきた。

藤田清輝は心臓が喉から飛び出しそうになるのを感じた。母親に似た眉目の少女を見つめながら、目に涙が滲み、必死に感情を抑えようとしたが、声は興奮と喜びのあまり震えていた。「君は...何という名前?」

「中森茜です」水野日幸は極めて礼儀正しく落ち着いて答えた。

映画スターがこんなに興奮するなんて?

そこまでする必要はないでしょう、本当に!

藤田清輝も自分が取り乱していることに気づき、めったに感情を抑えられないことはないのだが、落ち着こうと努め、温和な笑みを浮かべた。「驚かせてしまってすみません。母が君のことをとても気に入っていて、つい興奮してしまいました」

「大丈夫です」水野日幸は礼儀正しく微笑み返したが、彼の言い訳があまりにも強引だと感じた。

しかし今の彼女の注意は、すべて映画スターの絶世の美貌に引き寄せられていた。

この驚くべき美しさ、さすが芸能界の容姿の頂点に立つ男!

近くで見ると、さらに完璧に感じる。この神がかった容姿は、どんなに優れたカメラでも、彼の気品と美貌の十分の一二も表現できないだろう!

水野日幸が来たのは、実は藤田スターに会って互いを知り、そして契約を交わすためだった。

契約の件について、江川歌見は勝手に彼女の代わりにサインするのを躊躇い、藤田清輝も中森茜先生と直接契約したいと指名していた。

「藤田さん、これはあなたの以前のスタイルを基に設計した数点の案です。ご確認ください」水野日幸はデザイン画を手渡した。

藤田清輝は受け取り、目はデザイン画を見ているものの、心は完全に彼女に向いていた。頷きながら「いいですよ。中森茜先生にお願いすると決めた以上、すべてを任せるつもりです」

今の彼が切実に知りたいのは、ただ彼女の情報だけだった。

彼女は一体誰なのか?

本当の名前は?

両親は誰なのか?

このデザイン画なんて、見る余裕などなかった。

「藤田さんのご信頼、ありがとうございます。しっかり取り組ませていただきます」水野日幸は、彼が少し上の空で、心は彼女にあるようで、でもまた彼女にないようにも感じた。