第160章 お小遣い

暗くなって、葛生が品物を届けてきた時、水野日幸は詳しく確認せず、お礼を言ってすぐに帰宅した。

箱を持って家に着き、明かりの下で見た瞬間、目が眩むほど驚いた。

なんということだ。彫刻が施された紫檀の宝石箱で、間違いなく明朝前期の品物で、彫刻の技が非常に精巧だった。

最も素晴らしいのは彫刻だけではなく、宝石箱に嵌め込まれた宝石類だった。トルマリン、エメラルド、ルビー、天然パール。

これらの品々に、この神業とも言える精巧な彫刻を加えると、ざっと見積もっても億単位の価値があるはずだ。

水野日幸は胸がドキドキした。入れ物の箱がこんなに高価なのだから、中身は一体どんな価値のある宝物なのだろう。

畏敬の念と不安と興奮の入り混じった気持ちで慎重に箱を開けると、中には静かにブラックカードが一枚置かれていた。

ブラックカードの下には、メモ用紙があり、男性の流麗な筆跡で「小遣い」と書かれていた。

暗証番号:020324

水野日幸は呆然とした。自分はそんなにお金に困っているように見えるだろうか?お兄さんはなぜ彼女に価値のある宝石箱と、限度額のないブラックゴールドカードを小遣いとしてくれたのだろう?

プレゼントをもらえて嬉しいけれど、こんなに高価なものを受け取るのは、精神的な負担が大きすぎる。

水野日幸は一晩中考えても分からなかった。お兄さんがなぜこれらのものをくれたのか。

翌日、夜が明けないうちに、疑問を抱えたまま起き出して、玄関で葛生を待ち伏せた。

葛生は毎朝5時半に起きてジョギングをするのが日課だったが、数歩走ったところで人影に驚いた。目の前の少女を見て「水野お嬢様、どうしてここに?」

水野日幸は手に持った宝石箱とブラックカードを見せながら「お兄さんはどうして私に小遣いをくれたの?」

葛生は一瞬固まった後、彼女に向かってハートマークを作って「これですよ」

ボスは昨日彼を批判して、説明が間違っていると言ったくせに、結局水野お嬢様にお金を送らせた。つまり、ボスも同じように考えていたということだ。

水野日幸も彼の行動に呆れて、嫌そうに白い目を向けた。「このジェスチャーは軽々しくするものじゃないわ。私に向かってそんな変なポーズを取らないで」

「このジェスチャーがどうかしましたか?お金が欲しいという意味じゃないんですか?」葛生はもう一度ポーズを取った。