第173章 長谷川家当主

この世界には、空気の読めない奴が多すぎる。當主の家の娘がドラマを撮影しているのに、図々しい奴らが便乗して一儲けしようとして、わざわざ彼女を呼び出すとは。

當主はそれを知って、激怒した。

このバカどもは、大人しく生きていれば良いものを。

柳原浪尾は少年の姿が目の前から消えるのを見て、まるで今まで見ていた人が幻だったかのように、背筋が凍る思いで立ち上がり、顔面蒼白になった。

なんてことだ、あの出雲七は一体何者なんだ!

彼女の後ろには藤田家だけでなく、長谷川家まで付いているとは!

さっきの少年の腕に見えたのは、間違いなく長谷川家の家紋だった。

長谷川家は、藤田家と肩を並べる千年の歴史を持つ隠れ家門だ。

二十年前、長谷川家は五条家に滅ぼされ、たった一人だけが逃げ延びたという。五条家の末っ子、五条彦辰は長谷川家の外孫だった。