柳原浪尾は額に冷や汗を浮かべ、おずおずと説明した。「大変申し訳ございません。聞くべきではない話を聞いてしまい、欲に目が眩んでドラマを勝手に編集してしまいました。藤田さんには改心の機会を与えていただきたく存じます。」
もし出雲七が藤田家の人間で、コスモスエンタテインメントの後ろ盾が藤田家だと知っていたら、百倍の広告料を積まれても、千の命があっても、ストーリーに手を出したり勝手に編集したりなどしなかっただろう。
水野日幸は、先ほどまで自分に対して一歩も譲らず、険悪な表情を見せていた男が、一瞬にして塵のように卑屈になった様子を見て、目に嘲りの色を浮かべた。
人間というものは、弱い者には強く、強い者には弱いものなのだ!
柳原浪尾は事の顛末を説明したが、もちろん出雲七の脚本家をどのように罵ったかについては言及しなかった。