水野日幸は忙しく作業をしていたが、母の声を聞いて急いで階下に駆け降りた。「お母さん、どうしたの?」
出雲絹代は彼女の手を引いてテレビを見せた。「日幸、見てみて。このドラマのテンポがおかしいと思うんだけど、よく見てくれない?」
水野日幸はソファに座ってドラマを見始めた。見れば見るほど表情が暗くなり、最後には目に冷酷な殺気が宿り、その奥底には怒りの炎が燃えていた。
よくも!
テレビ局の図々しさには呆れる!
彼女のドラマを勝手に編集するなんて!
今日放送された内容には、既にカットしたはずのシーンが大量に追加され、テンポは遅くだらだらと、内容は冗長の極みだった。
さらに腹立たしいことに、CMの放送時間が2倍になっていた。
「日幸、おかしいでしょう?」出雲絹代が尋ねた。
水野日幸は頷いた。おかしいどころか、とんでもなくおかしい。誰が彼らにドラマを勝手に編集する権利を与えたというのか。「お母さん、今から会社に行ってくる」
『笑江山』の視聴率が爆発的に上がったから、広告収入のために違約金を払ってでも手段を選ばないつもりなのか?
ドラマを売り渡したからといって、好き勝手に編集していいと思っているのか?
「日幸、お母さんも一緒に行くわ」出雲絹代は娘の深刻な様子を見て、きっとドラマのことだと察し、急いで後を追った。
水野日幸は母親を見て言った。「お母さん、水野を待っていてあげて。私は兄に会いに行くだけだから、今日は帰れないかもしれない。心配しないで、いつでも電話してね」
出雲絹代が心配しないはずがない。娘をマンションの入り口まで見送り、車に乗るのを確認してから家に戻った。
源那津は日本にいなかった。昨日出張で海外に行ったばかりだった。会社の管理職から電話を受けてこの件を知ると、すぐに水野日幸に電話をかけた。「日幸、焦らないで。軽率な行動は取らないで。すぐに帰国するから、明日一緒に行こう」
テレビ局は体面も何もかも捨てて、全面対決するつもりなのか?
国内の多くのドラマは、テレビ局が放送権を買った後、自分たちで編集して放送している。
しかし『笑江山』は違う。水野社長の強い要求で、放送条件は契約書にはっきりと明記されている。彼らの編集通りに放送しなければならず、各話の放送時間を勝手に変更したり、編集したりしてはいけない。