第195章 ご容赦ください

浅井長佑は彼女に近づき、耳元で囁いた。「水野お嬢様、やはり直接祖父にお渡しになられてはいかがでしょうか。祖父はまだお待ちですし、先ほどの件についても、きっとご説明させていただけると思います」

この件については、浅井家の非は明らかだった。

「結構です」水野日幸は丁寧に断った。「浅井爺様のご多幸とご長寿をお祈りしております」

浅井長佑は少し焦り、声を潜めて言った。「水野お嬢様、私に免じてお願いできませんでしょうか。我が浅井家は、心からお嬢様との協力を望んでおります。祖父もお嬢様を高く評価しております。事情は中でゆっくりとお話しいたしましょう。その後でご判断いただけませんか?」

傍観者たちには事情が分からなかったが、浅井さんがあの娘に対して非常に丁寧に、敬意を持って話しかけているのが見て取れた。きっとあの若い娘の身分は並々ならぬものに違いないと思われた。

曽我若菜は水野日幸が浅井長佑に連れて行かれるのを見ながら、疑問が膨らみ、いらだちと嫉妬に耐えられず、まるで全身が燃えるようだった。

黒田夜寒も事情が分からず、彼女に尋ねた。「水野日幸と浅井長佑はどういう関係なんだ?」

曽我若菜は首を振り、柔らかく委細そうに彼を見つめた。「分かりません」

黒田夜寒は眉をひそめ、目の奥に暗い色が渦巻いていた。水野のあの生意気な娘が、どうして浅井家と関係を持つようになったのか。浅井長佑と彼女の関係は、ただならぬものに見えた。

水野日幸が浅井長佑と去ると、見物していた客たちも浅井家に入り、黒田夜寒と曽我若菜に水野日幸の身分について次々と尋ねた。

黒田夜寒は決して気の良い性格ではなく、不機嫌そうに周りに集まってきた人々を睨みつけた。「俺にも分からん。全員消えろ!」

そう言うと、曽我若菜の手を引いて立ち去った。

客たちは顔を見合わせた。あの娘は一体何者なのか。曽我お嬢様は妹と呼んでいたのに、彼女は曽我お嬢様を知らないと言った。きっと曽我家の親戚なのだろう。

後から来た人が、状況を聞いた後で悟ったように言った。「あの娘は確か水野日幸という名前でしたよね?曽我家の遠い親戚で、曽我家に一年ほど住んでいて、その後出て行ったけど、まだ帝都にいるそうですよ」

その場にいた人々は、曽我家の遠い親戚だと聞いて感慨深げだった。最近の曽我家は運が向いているようだ。