曽我若菜は数人の親しい令嬢たちと庭園で話をしていたが、水野日幸が通り過ぎるのを見て、適当な言い訳をして追いかけていった。
水野日幸は悠々自適に庭園の景色を楽しみながらトイレの方向へ向かっていた。途中で道端から石を拾い上げ、手の中で二度ほど弄びながら、唇の端に血に飢えた笑みを浮かべた。
曽我若菜は彼女の動作を見て、恐怖で体が硬直し、目の奥に毒々しい色が宿り、憎しみが込み上げてきた。しばらくその場に立ち尽くしてから、やっと追いかける勇気が出た。
このトイレは宴会場からかなり離れており、ほとんど来客は訪れない場所だった。
黒田夜寒はトイレのドアの後ろに隠れ、手に木の棒を持って、水野日幸が入ってくるのを待ち伏せし、不意打ちを仕掛けようとしていた。
正々堂々なんてくだらない、彼は気にしなかった。水野日幸というあの生意気な女を懲らしめることができれば、卑怯者になってもいい。