第203話 クズ男の本性

水野日幸は安美が彼女を助けに来たと思っていたが、黒田夜寒の表情を見た瞬間、二人が知り合いだと分かった。彼女に注意を促した。「敵に慈悲を与えることは、自分に残酷になることだ」

曽我若菜が硫酸で人を傷つける勇気があるなら、罰を受けるべきだ。狂ったふりをして知らないふりをしても、彼女が同意するかどうかだ。

安美は目を逸らし、彼女を見る勇気がなく、小さな体で卑屈そうに見え、小声で言った。「分かりました」

「私がいるから、彼を恐れる必要はない」水野日幸は穏やかな声で静かに彼女を見つめながら言った。

「若菜は何も知らないと言っている」黒田夜寒の態度は、誰が正しくて誰が間違っているかに関係なく、最後まで守り通すというものだった。皮肉な目つきで「それに、硫酸を掛けたとしても、それは私に掛けたんだ。お前が勝手に飛び出してきたんじゃないか?怪我をしたからって、人のせいにはできないだろう?」

水野日幸の短気な性格。

くそっ、黒田夜寒のこの野郎、全て自業自得だという渡世人のような態度に、ぶん殴ってやりたい衝動に駆られた。

安美は目を赤くして、うつむいたまま、体を小刻みに震わせていた。痛みのせいなのか、それとも彼の言葉に傷ついたのか、軽く頷いた。

水野日幸は瞬時に、期待外れな気持ちと失望感を覚えた。

黒田夜寒のこの野郎の一言で、いや、安美が彼の言うことを何でも聞くからだ。彼が何を言っても、彼女は同意する。もし彼が死ねと言えば、彼女は躊躇なく死んでしまうだろう。

「水野さん、当事者が気にしていないと聞いたでしょう」黒田夜寒は曽我若菜を抱き上げ、嘲笑うように彼女を見て言った。「どいてもらえますか」

「黒田若様は浅井家の者を全員死んだと思っているのですか?」

威厳のある艶やかな女性の声が入り口で響いた。姿を見る前に声が聞こえてきた。

水野日幸が振り向くと、女王の威厳を纏った女性が入ってきた。目尻と眉に色気が漂い、魂を奪うほどの美しさだった。

安美の体の震えは更に激しくなり、頭を体の中に埋めたいほどで、逃げ出そうとした。

しかし、入ってきた美しい女性に腕を掴まれ、彼女を見つめながら言った。「石田安美、どこに逃げるつもり?」