少女は良い知らせだけを伝え、悪い知らせは伝えない。成功したことは少しも隠さないが、物事を進める過程で受けた辛い思いや、遭遇した危険については、彼に一切打ち明けない。
彼は分かっていた。彼女が彼を心配させたくないからだと。
彼も分かっていた。彼女を信じ、自由に羽ばたかせなければならないと。
水野日幸は自分の状況を話し終えると、飴の様子を報告し始めた。「お兄さん、知らないでしょう?あの子すごく食べるの。一回の食事でこんなにこんなに食べるのよ」
長谷川深:「そのこんなにってどのくらい?」
水野日幸は片手を広げて大げさに示した。「こーんなに。この食いしん坊な猫ったら、私が何か食べてるのを見るとすぐおねだりするの」
「好きにすれば」長谷川深は笑いながら冗談を言った。
水野日幸は両頬を膨らませ、諦めたように反論せずに言った。「よく食べる子は福がある。人生から美味しい物がなくなったら、どれだけ楽しみが減ることか!」
長谷川深は可愛らしい少女を見つめながら、二重の意味を込めて言った。「そんなに食べるなら、生活費を払わないといけないね」
水野日幸はため息をつき、感慨深げに言った。「今や水野家の猫なんだから、家計を食い潰したとしても仕方ないわ」
長谷川深は愛おしそうに笑いながら、振り向いて葛生を呼んだ。
葛生は二つの綺麗な包装袋を持ってきて、彼女のかごに入れた。
長谷川深は笑って言った。「飴へのプレゼントだよ」
水野日幸は自分へのプレゼントだと思っていたので、飴のものだと聞いて少し落胆し、子猫の頭を軽く叩いた。「プレゼントもらったんだから、早くお礼を言いなさい」
飴は彼女に向かって可愛らしく「にゃー」と鳴いた。その柔らかな小さな声は綿菓子のように甘くて柔らかだった。
「お礼を言うのは彼に対してよ、私じゃないでしょ、このおバカさん!」水野日幸がプレゼントを受け取ったばかりのとき、水野春智が帰って来て食事をするように呼んだ。そんなに時間が経っていないと思っていたのに、すっかり暗くなっていた。「お兄さん、プレゼントありがとう」
長谷川深は少女が帰らなければならないことを知り、心に寂しさが走った。彼女と一緒にいる時は、いつも時間がもっとゆっくり過ぎてほしい、もっとゆっくりと、できればこの瞬間が永遠に続けばいいのにと願っていた。「帰って食事をしておいで」