第221章 一足の手袋

少女は良い知らせだけを伝え、悪い知らせは伝えない。成功したことは少しも隠さないが、物事を進める過程で受けた辛い思いや、遭遇した危険については、彼に一切打ち明けない。

彼は分かっていた。彼女が彼を心配させたくないからだと。

彼も分かっていた。彼女を信じ、自由に羽ばたかせなければならないと。

水野日幸は自分の状況を話し終えると、飴の様子を報告し始めた。「お兄さん、知らないでしょう?あの子すごく食べるの。一回の食事でこんなにこんなに食べるのよ」

長谷川深:「そのこんなにってどのくらい?」

水野日幸は片手を広げて大げさに示した。「こーんなに。この食いしん坊な猫ったら、私が何か食べてるのを見るとすぐおねだりするの」

「好きにすれば」長谷川深は笑いながら冗談を言った。

水野日幸は両頬を膨らませ、諦めたように反論せずに言った。「よく食べる子は福がある。人生から美味しい物がなくなったら、どれだけ楽しみが減ることか!」