第216章 服を買うお金がない

大豆田秋白は明らかに一瞬固まり、この小娘は毎回彼と話すときは遠回しな言い方をするのに、今回初めてこんなにストレートに罵ってきた。むしろ少し嬉しく感じた。「恥ずかしくて怒ってるの?」

水野日幸は冷たい視線を投げかけ、冷ややかに一言:「消えろ!」

大豆田秋白は罵られたものの、気分は極めて良好で、出ていく時に辻緒羽と鉢合わせた。ギフトボックスを彼に投げ渡し、笑って言った:「あげるよ」

辻緒羽は顔を曇らせ、「くそっ」という言葉が口まで出かかったが、彼はすでに階段を降りて、あっという間に姿を消していた。

教室は普段以上に騒がしく、どよめいていた。

石田文乃も嬉しくて仕方がなく、彼の肩に手を回して中に入りながら、喜びを伝えた:「緒羽様、お知らせがあるの。私、芸能界に入ることにしたの。芸能人になる準備をしているの」

辻緒羽は露骨に嫌そうな顔をして:「頭でも打ったの?それとも馬に蹴られたの?」

石田文乃は全く気にせず、嬉しそうに:「緒羽様、祝福してくれるべきでしょ?私の最強の応援者になってくれるよね?」

辻緒羽は本気にせず、この気まぐれな子の相手をするのも面倒で、だらしなく自分の席に座り、ギフトボックスを机の上に置いて、水野日幸に尋ねた:「大豆田秋白は何の用だったの?」

水野日幸は問題を解きながら、淡々と答えた:「あいつ、頭がおかしいの」

辻緒羽は彼女の言葉に深く共感し、机の上の二つのギフトボックスを見て、全部水野日幸に渡した:「これ、美容効果がいいって聞いたから、家に持って帰ってお母さんにあげたら?」

水野日幸は無関心に答えた:「うちにはこれが一番要らないわ」

「日幸は要らないかもしれないけど、私は欲しいわ。緒羽様、私にちょうだい!」石田文乃が走ってきて奪い取り、にこにこしながら言った:「今日から一日二個ずつ食べて、お肌をしっかりケアして、芸能界デビューの準備をするわ」

辻緒羽がよく聞いてみると、石田文乃は本気だということが分かった。ただし、水野日幸に忠告した:「あまり信用しない方がいいよ。すぐに考えが変わる子だから、番組収録の時になったら、怖気づいて投げ出すかもしれないよ」

水野日幸は石田文乃を見て、笑いながら言った:「私は信じてるわ」