「ちゃんと話せよ」辻緒羽は足を机の上に投げ出し、だらしなく寄りかかりながら、横目で彼を見た。「あのクソ野郎がついに姿を現したのか?」
林格史は頷き、息を切らしながら言った。「壇上で、五つ縛りにされて頭から袋を被せられて、壇上に放り出されてましたよ。緒羽様、誰の仕業だと思います?」
辻緒羽は指の腹で唇の端を拭い、傲慢で血なまぐさい笑みを浮かべながら立ち上がると、かっこよく机に手をついて飛び越え、振り返って水野日幸に笑いかけた。「日幸、一緒に見に行かないか?」
「行かない」水野日幸は淡々と答えた。
昨夜、石田文乃が家に来て初めて知ったのだが、辻緒羽は曽我時助と賭けをしていたのだ。賭けの内容は彼女がレッドカーペットを歩くかどうかで、負けた方が股の下を這い抜けることだった。
石田文乃は諦めきれず、彼女を引っ張って行った。「日幸、見に行こうよ。曽我時助のクソ野郎、今回は完全にやられちまったんだ。これで学校でこれ以上調子に乗れないだろう。スクールプリンスだって?笑わせるな!」
水野日幸は石田文乃と女子たちに無理やり引きずられるようにして運動場まで連れて行かれた。
運動場は今や大賑わいで、第四中学校と中学部を合わせて約一万人の生徒がいた。事態は大きくなり、見物人も多く、中学部の生徒たちまで駆けつけていた。人が山のように集まり、遠くからは頭しか見えなかった。
辻緒羽が指名手配した人物で、曽我時助を発見した瞬間、林格史は人を付けて見張らせ、自分は報告に行った。
石田文乃は威勢よく、女子たちを引き連れて騒々しく、かなり強気な様子で道を開けさせ、すぐに壇上にたどり着いた。
大豆田秋白もつい先ほど到着したばかりのようで、曽我時助の傍らにしゃがみ込んで言った。「時助、賭けは賭けだ。兄弟だからって言って助けてやれることもない。さっさと済ませて、保健室に連れて行ってやるよ」
曽我時助は目から血が出そうなほど怒りの眼差しを向け、歯を食いしばって言った。「大豆田秋白、お前なんか俺の兄弟じゃない!」
兄弟?
兄弟にこんなことをする奴がいるのか?
最初に自分を見つけたのは明らかに彼なのに、見逃してくれるどころか、辻緒羽に知らせに行かせた。こんな兄弟なんていらない。