「ちゃんと話せよ」辻緒羽は足を机の上に投げ出し、だらしなく寄りかかりながら、横目で彼を見た。「あのクソ野郎がついに姿を現したのか?」
林格史は頷き、息を切らしながら言った。「壇上で、五つ縛りにされて頭から袋を被せられて、壇上に放り出されてましたよ。緒羽様、誰の仕業だと思います?」
辻緒羽は指の腹で唇の端を拭い、傲慢で血なまぐさい笑みを浮かべながら立ち上がると、かっこよく机に手をついて飛び越え、振り返って水野日幸に笑いかけた。「日幸、一緒に見に行かないか?」
「行かない」水野日幸は淡々と答えた。
昨夜、石田文乃が家に来て初めて知ったのだが、辻緒羽は曽我時助と賭けをしていたのだ。賭けの内容は彼女がレッドカーペットを歩くかどうかで、負けた方が股の下を這い抜けることだった。