水野日幸は何も動かさず、ただ自分の服を掛けるためのハンガーラックを一つ空けただけだった。結局一週間も滞在するのだから、服を全部スーツケースに詰め込んでおくわけにはいかない。
スーツケースの整理を終え、自分の洗面用具を全部置き、お腹も空いてきたので、スーツケースを開けて自己発熱式の米飯と火鍋を一つずつ取り出した。
この時期はまだ、自己発熱式の火鍋や丼物が流行っていなかった。彼女が水野に相談して、水野が委託工場に頼んで作ったばかりの新商品で、まだ市場に出回っていなかった。
彼女はここでの生存のため、スーツケースいっぱいのインスタント食品を持ってきた。火鍋、米飯、おかず、インスタントラーメン、螺蛳粉、ラーメンなど、何でも揃っていた。
ちょうど外に出ようとしたその時。