藤田清輝は「うん」と返事をした。「分かった。でも、必ず安全に気をつけてね。夜は一人で出歩かないで。あそこは人が少ないから、悪い人に会わないように。山には猛禽類もいるし、むやみに山に入らないで。やっぱりボディーガードを何人か付けようか!」
「お兄さん」水野日幸は心が温かくなり、笑いながら言った。「お母さん以上に心配性ね。安心して、手足がちゃんとついたまま、無事に帰ってくるから」
「変なこと言うなよ」藤田清輝も何故だか分からないが、心配が止まらなかった。彼女が十分な食事も睡眠も取れないのではないか、危険な目に遭うのではないかと。「何かあったらすぐに電話してくれ」
この子は何も要らないと言うばかりで、あんなに大きな空っぽの邸宅に一人で住むなんて、怖くないのかと心配だった。
「うん」水野日幸は力強くうなずき、笑いながら尋ねた。「こんなに大きな家で、本当にどの部屋でも好きなところに泊まっていいの?自由に選んで?」
「もちろんだよ」藤田清輝は優しい声で答えた。「好きな部屋を使えばいい。ガレージには車もあるし、鍵は全部リビングのキャビネットの上にあるから、好きな車を選んで乗ってくれ」
「ありがとう、お兄さん」水野日幸は藤田清輝と電話をしながら、すでにスーツケースを引いてリビングに到着していた。
巨大なリビングには高いドーム天井があり、手作りのステンドグラスで装飾され、まるで王宮のように美しかった。
リビングのソファー、テーブル、椅子、どれもがデザイン性に優れており、壁には世界的に珍しい名画が飾られ、控えめながらも至る所に上品な贅沢さが感じられた。
水野日幸は部屋にこだわる方ではなく、一日中飛行機に乗って疲れ果てていたので、自分の近くで、最も歩く距離が少なくて済む部屋を選んだ。
部屋は広かったが、少し雑然として奇妙な配置だった。
白いレースのキャノピーベッドには、スカイブルーのシルクのベッドリネン。
床には精巧な刺繍が施された白い羊毛のカーペットが敷かれていた。
ピンクのクローゼット、ピンクのドレッサーと可愛らしいピンクの椅子。
グレーがかった白の本棚には、様々なジャンルの本が置かれていた。
鮮やかなオレンジ色の本革ソファーには、たくさんの可愛いぬいぐるみが置かれていた。