第256章 藤田邸

出雲絹代は娘が一人で遠い異国に行くことを考えると、心配で仕方がなかった。「あなたが大きくなるまで、どこに行くにもお母さんが一緒だったのに」

娘は幼い頃から、曽我家に引き取られた期間を除いて、いつでもどこへ行くにも、自分が一緒について見守り、世話をしてこそ安心できたのだ。

「お母さん、私はもう大人だから、一人でも大丈夫」水野日幸は母を気遣いながら涙を拭った。「もう泣かないで。水野が知ったら、また私を叱るわよ」

出雲絹代はスーツケースを持ちながら、歩きながら細かいことまですべて念入りに言い聞かせた。娘は曽我家から戻ってきてから、確かに成長したけれど、どれだけ大きくなっても、自分にとっては子供のままなのだ。

水野日幸は搭乗口に入り、出雲絹代に手を振った。「お母さん、行ってきます」