「はい」川村染は外の方向を見て言った。「この件は急がずに、じっくり考えましょう」
「日幸を責めないでください。彼女は昔、家にいた時は私たちの言うことをよく聞いて、何でも言うことを聞いてくれて、私たちにも懐いていたのです。ただ心を深く傷つけられ、水野夫妻に離間されて、私たちと娘の関係を壊されただけなのです。
子供なんですから、何もわかりません。大人が言うことを信じるだけです」曽我逸希は彼女を諭した。「今は養父母に心を惑わされているだけです。私たちこそが実の親なのです。きちんと話せば、誰が本当の家族で、誰が頼れる人なのかわかるはずです」
水野家のあの忌々しい夫婦め、よくも血のつながった親子の仲を裂こうとするとは。許すわけにはいかない。
「ええ」川村染もうなずいた。「水野春智夫妻は本当に許せません」
あんなに素直だった娘が、家にいた時は私の言うことを何でも聞いてくれたのに、たった数ヶ月で反抗的になって、躾もなってない、汚い言葉ばかり使って、私を怒らせてばかり。全て水野家のあの忌々しい夫妻が教え込んだせいです。
二人はよく話し合い、娘は惑わされているだけで、だから彼らにこんな態度をとるのだと意見が一致した。水野夫妻さえどうにかすれば、全てが解決し、娘も彼らのもとに戻ってきて、言うことを何でも聞く良い子になるはずだと。
その後、曽我逸希と川村染は時間があれば水野日幸に会いに行ったが、なぜかいつも会えず、水野夫妻に手放すよう説得するしかなかった。
曽我逸希は水野夫妻を脅すため、わざわざ警察と弁護士を連れて水野家に行き、大人しく娘を引き渡すよう迫った。さもなければ裁判所で会おうと。
しかし水野春智はそんな脅しには全く動じず、逆に不法侵入で通報し、警察沙汰になりかけた。
曽我逸希は怒り心頭で、娘にも会えず、水野夫妻とも話がつかず、年末には会社の仕事も忙しくなり、そのまま膠着状態が続いた。
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期末試験が終わり、今学期の授業も終了し、冬休みに入った。
水野春智はまだ会社の仕事で年末まで忙しかった。
出雲絹代は水野日幸を連れて、早めに実家に帰ろうと考えていた。先祖供養の時に一緒に帰れなかったので、実家の年長者たちは彼女のことを心配していた。