第265章 彼女が愚かすぎるのが心配

おそらく時間が遅かったせいか、家には二人きりだった。

それとも、先ほど藤田清明が茶碗を彼女に投げつけそうになったことへの後ろめたさからか、彼女が箸を持って一緒に火鍋を食べようとしても、彼は怒って追い払うことはしなかった。

藤田清明は、深夜にお腹を空かせた自分よりも美味しそうに食べ、さらに自分の取り分まで奪おうとする彼女を見て尋ねた。「女の子って、夜食は食べないものじゃないの?」

母も叔母も、食べない人たちだった。

特に叔母は、夜6時を過ぎたら何も口にしなかった。叔母曰く、お姫様は朝露と花の蜜だけで生きているのだと。

「女の子に対して何か誤解があるんじゃない?」水野日幸は楽しそうに食べながら、口の中が一杯で不明瞭に言った。「男の子が食べられるなら、私たちだって食べられるでしょ」

藤田清明は眉をひそめた。「俺は夕飯を食べてないけど、お前も食べてないのか?」

水野日幸は反論した。「食べたからって、また腹が減っちゃいけないの?じゃあ、朝ごはん食べたら、昼と夜は食べなくていいってこと?一回食事したら、一生持つってこと?」

藤田清明は言葉に詰まった。彼女の詭弁だと分かっていても、反論の言葉が見つからなかった。……

はいはい、君の勝ちだよ。

藤田清明は今、おそらく美味しい食事のおかげで、全く怒る気にもならず、彼女を見ているとむしろ愛おしく感じるほどだった。

水野日幸は彼に聞いた。「ずっと本を読んでたの?」

藤田清明:「うん」

水野日幸:「お腹が空いて食べ物を探しに来たの?」

藤田清明:「本を読み終わったから」

水野日幸:「へぇ!」

本当に本の虫ね、寝食を忘れるって最高レベルだわ。本を読んでてお腹が空いたことにも気づかないなんて、尊敬尊敬。

二人はそれ以上言葉を交わさず、それぞれ食事に集中したが、不思議と雰囲気は和やかで温かかった。

藤田清明は職業柄、潔癖症がかなり重く、誰と食事をする時も必ず取り分け用の箸を使うことを徹底していた。

食事の前に、彼女に厳しく警告した。一緒に火鍋を食べるなら、取り分け用の箸を使うようにと。

水野日幸は家で食事をする時にそんな習慣がなく、よく忘れては自分の箸で直接食べ物を取ろうとしてしまう。