おそらく時間が遅かったせいか、家には二人きりだった。
それとも、先ほど藤田清明が茶碗を彼女に投げつけそうになったことへの後ろめたさからか、彼女が箸を持って一緒に火鍋を食べようとしても、彼は怒って追い払うことはしなかった。
藤田清明は、深夜にお腹を空かせた自分よりも美味しそうに食べ、さらに自分の取り分まで奪おうとする彼女を見て尋ねた。「女の子って、夜食は食べないものじゃないの?」
母も叔母も、食べない人たちだった。
特に叔母は、夜6時を過ぎたら何も口にしなかった。叔母曰く、お姫様は朝露と花の蜜だけで生きているのだと。
「女の子に対して何か誤解があるんじゃない?」水野日幸は楽しそうに食べながら、口の中が一杯で不明瞭に言った。「男の子が食べられるなら、私たちだって食べられるでしょ」