第264章 お腹が空いた

外は、雨が強くなっていた。

夜が深まっていく。

水野日幸は夕食に火鍋を食べ、喉が渇いて目が覚め、キッチンへ水を飲みに這い出した。

ぼんやりとしたまま台所に入ると、何かが彼女の額めがけて飛んできた。咄嗟に身をかわすと、バンという音とともに目の前で物が砕け散った。それは陶器の茶碗だった。

水野日幸はすっかり目が覚めた。避けるのが遅ければ、額から血を流すところだった。彼女は叫んだ。「藤田!清明!」

藤田清明は食器棚の扉を一つずつ開けて何かを探していた。電気もつけず、彼女が突然入ってくるとは思ってもいなかった。半分眠そうな目をした可愛らしい杏眼で、不満げかつ甘えるような表情を浮かべる少女を見て、心が和らいだ。思わず「ごめん」と口にした。

水野日幸は一瞬固まった:……

藤田清明は戸惑いながら前に出て、緊張した様子で彼女の肩をつかみ、目には隠しきれない心配の色が浮かんでいた。「君が入ってくるとは思わなかった。怪我はない?見せて。」

「大丈夫よ」水野日幸は眉をひそめ、彼の手を払いのけ、嫌そうな顔で彼を見た。「そんなに触らないでよ。こんな遅くに、何をこそこそしてるの?」

藤田清明:「本を読んでたら、お腹が空いてきて。」

水野日幸は窓の外を見た。何時かはわからないが、彼女が一度寝て起きているのだから、かなり遅いはずだ。

午前2時。

藤田清明はお腹を満たすために何か探していた。本を読んでいた時、水野日幸がドアをノックして自己発熱式の火鍋を台所に置いたと言っていたのを思い出し、探していたのだ。

「私がやるわ!」水野日幸は彼を見て尋ねた。「あなた、できるの?」

目の前のお坊ちゃまは、料理なんて一切したことがなさそうな雰囲気だった。

藤田清明は少し自慢げに:「僕は料理が上手いんだよ。」

水野日幸:「料理とこれは違うでしょ。」

藤田清明は嘘をついていなかった。料理のできる人は、自己発熱式の火鍋を作るのも彼女とは違っていた。

水野日幸は、彼が火鍋の調味料パックや野菜パック、肉パックを全部取り出して鍋に入れるのを見ていた。「細かいところまで気を使うのね。」