第267章 寵愛を恃む

藤田清明:「私が助けたから、私も行くんだ。」

水野日幸:「あなたって、恩を着せがましいわね!」

藤田清明は傲慢に鼻を鳴らし、当然という表情を浮かべた。

水野日幸は彼を蹴り落としたい衝動に駆られ、縛られた強盗を指差して:「この人たちはどうするの?」

藤田清明:「誰かが処理するさ。」

水野日幸は彼の言葉を聞き終わると、左後方をさりげなく見やった。

彼女は知っていた。藤田清明が外出する時は、必ず暗殺者が護衛についている。彼らは武術に長け、特に姿を隠すのが上手かった。

藤田清明は幼い頃から、どこへ行くにも護衛が付き添っていた。先ほども水野日幸が出手しなくても、護衛たちが彼を危険から守っていたはずだ。

しかし、護衛の暗殺者たちが動く前に、家に居候している少女が先に動いてしまった。

少女の動きは実に美しく、無駄のない手際の良さで、まさに日本の一代の達人のような風格があった。

しかし、家の若坊ちゃんが少女にヒーローぶろうとしたのに、逆に少女に助けられてしまった。

水野日幸は車を運転し、スピードは速かった。

藤田清明は彼女を見て:「運転が上手いじゃないか。レース経験はある?」

この少女の一挙手一投足には、レーサーの風格が漂っていた。

水野日幸は自信に満ちた笑みを浮かべ:「信じるかどうかは別として、世界中で私に勝てる人はいないわ。」

藤田清明は嫌そうな顔をして:「嘘も税金かからないからね。」

水野日幸は口を尖らせ:「信じなければそれでいいわ。」

車の速度は速すぎず遅すぎず、ちょうど心地よい速度だった。

目的地に着いた時、助手席の藤田清明はすでに眠りについていた。

水野日幸は車を降り、冷たい目つきで左後方を見やって:「出てきなさい!」

藤田清明が眠っていたので、水野日幸は彼のボディーガードに彼を家まで送り届けてもらった。

これだけ時間がかかったが、まだ五時半だった。

庭園の近くは静かで、人影一つ見えなかった。

水野日幸は門の前で待ちながら、向かいの方向を見つめていた。山の向こうは東方で、すでにうっすらと明るみが差し始めており、きっと晴れた一日になるだろう。

柴田玉平は毎朝五時半に起きて散歩と太極拳をするのが日課だった。門を開けると、すでに誰かが門前で待っているのが見えた。